『三年目の作家、として』
六月二十四日、水
(では、公理を求める。まず、私が先に挙げた理論構築を目指す目的、を明らかにする。
それは、私が最上の文物芸術作品の実現を目指すからである。
次に、芸術とは何であるか、を明らかにする。
芸術とは、表現者がある間接的な手段を通じて感受者にその内部からある感覚をもたらすもののことである。
間接的な手段というのは、彫刻であり、絵画であり、音楽であり、そのような物を通じて伝達する手段のことであり、直接、感受者に触れたり叩いたりする手段ではないことを示している。そのような直接的な手段を通じて伝達するものは芸術ではなく現実である。
内部からある感覚をもたらすというのは、現実に物理的に存在する姿とは違うものを感受者に知覚させることである。
例えば絵画で言うならば、白い花が描かれている絵によって、白い花だけではなく、例えば美しさであり、切なさを知覚させるものである。それは外部から直接与え得るものではなく、感受者の内部から引き出すものである。
次に、内部から引き出すことのできるものとはどんなものであるか、を考える。
それは最低限、時間的広がりと空間的広がりとを持つもの、つまり世界を持つものである。しかも感受者に自分自身がその世界にいると感じさせるような世界である。
何故なら、感受者の内部からある感覚を引き出すためには感受者自身がそのものに働きかけなければならないのであり、その働きかけとは描かれていない部分の時間的、空間的広がりを埋める行為に他ならないからである。
そしてその埋める行為によって作品と同化した感受者は、その作品中の世界において、現実世界で知覚するような、ある感覚を生々しく覚えるのである。
次に、どのようにして芸術の優劣を決定するのか、を明らかにする。
芸術の優劣は、感受者にもたらされた感覚の種類の数とその強度との積で決まる。
以上のことから、最上の文物芸術作品とは何であるか、を結論する。
最上の文物芸術作品とは、表現者が言語を手段として世界を構築し、感受者の内部に、先に示した積が最大となる、ある感覚をもたらすもののことである。
では、その実現のためには何が必要であるか。
それには最低限、言語を効果的に伝達する力、つまり表現力が必要である。つまり、言語理論の構築が有効である。そして、もたらすべき感覚を常に明確に見据えながら文を構築する力が必要である。
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