『三年目の作家、として』
さて、ここで気を付けたいのは、文には必ず矛盾が含まれているということである。
と言うのは、現在形で書くことは「読んでいる文」において真であるが、「読み終えた文」において偽であるからである。逆に、過去形で書くことは「読んでいる文」において偽であるが、「読み終えた文」において真である。
更に、読む瞬間において、その文が書かれた時点から考えれば過去形が真であり、また、読む時点で考えれば現在形が真である。
ここに述べた時制の判断基準は読み手であるが、書き手においても同じようなことが言える。例えば、今書いている文は現在形で、書き終えた文は過去形で、と言うように。
これは記号が自らその形態を変えることができず、かつ、読まれた直後に消滅することもできないという点から起きる問題であり、微妙で、取るに足りなく、必要不可欠な問題である。
そしてそれは、書かれてしまう「文」の問題であり、読む前に存在してしまう「文」の問題である。言葉遊びであり、その遊びを用いて思考することの問題である。結論までは程遠い。
最後に、表記法に関連した問題において感じた、ありきたりな意見を述べるという、ちょっとした自己満足を果たしたい。
表記には活字、直筆があるが、私は活字を大いに称賛する。それは自らの文字が稚拙であるからだけではない。
文字の形状が作品に与える影響は余りにも大きい。その点、活字はそれ自身、無機質で何の特徴をも含んでいないがために、かえって作品を文字形状から自由にし、文字の組合せからなる観念の創造に集中することができるようになった。
私はそれを言語表現の進化と称賛せずにはいられないのである)
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