『三年目の作家、として』
黙り込んでいるナナ。自ら俺を責め立てさせる静寂。外を見ているナナ。耐え切れない。
「人はどうやって夢が夢と分かるか分かるか?」
黙り込んでいるナナ。静寂。外を見ているナナ。静寂。
「例えば今日、雲で天の川が見えなくても、それでもあいつらは再会し、一年分の性交を果たすように、全ては、言葉ですら、その真偽を決めるのは、結局、感覚でしかないんだ」
黙り込んでいるナナ。静寂。外を見ているナナ。静寂。
「だけど、こうやって言語とばかり向かい合っていると、まるで自分が記号の形に切り抜かれるみたいなんだ」
自らの両肩を抱きすくめるナナ。俺は続ける。ステアリングが傾く。
「そして気が付けば、まるで全身が欠如しているかのようなんだ」
肩をすくめ、ナナが震え出す。
「思い起こしたり、組み合わせたり、移ったり、感じたり、何をしている、俺は? 表面をなぞっているに過ぎない」
肩をすくめ、震える、震える、震える……
「結局のところ、俺は狂っているんだ。それが俺が狂っていない証拠」
ナナが呟く。細く、擦れた声。
「光……闇……光……闇……張り裂けそう……遠くて……単調で……広くて……ねえ……張り裂けそう……」
高速出口。ランプ。「みなとみらい」ステアリングをゆっくり切る。
「ランドマークタワーは? あれほど人が手を掛け、人の手から離れたものが手を掛けたものはない」
迫り来るバベルの塔。澄み切った夜空。聳え立つ塔。澄み切った夜空。恐ろしく遠い塔。澄み切った夜空。
「……触れ合いなんて、欲しくないの……広さなんて、欲しくないの……明るくて……複雑で……混沌としてて……冷酷な……」
車が徐々にスピードを落とす。左を流れる縁石が近い。路面を点滅させるハザードランプ。
「……唯則は?」
センチュリーが停止した。心の触れ合い? エンジンが停止した。いや……ナナを抱き寄せた。
……ただ、肌の触れ合いが欲しかった。
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