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三年目の作家、として
 このように、語は二つ以上の複数の語が互いに関係し、連なり、文となることによって初めて成立するのである。
 文は語がなければ成立せず、語は文でなければ成立しない。もちろんここでの「語」は、表現としては無でも状況としては有であるところのものを含む。
 そして承知の通り、語は性質によって名詞、動詞、等に分けられる。また、他の語の分け方として、文中に果たす役割に基づいて分類する方法がある。主語、述語、修飾語、である。この分類方法で更なる分析を試みる。
「電飾を施された日本丸が、うごめく暗黒の大地のような海に浮かんでいる」
 この文を分類する。
「電飾を施された(修飾語1)日本丸が(主語)、うごめく暗黒の大地のような海に(修飾語2)浮かんでいる(述語)」
 この文における読者の意識の流れとして、まず、修飾語1がその様子を宙に浮かべたまま次なる主語を待ち、主語の出現によって宙に浮いていた修飾語1が主体に貼り付き、そして貼り付いたその主体を宙に浮かべたまま述語を待つ。次に、修飾語2がその様子を宙に浮かべたまま次なる述語を待ち、述語の出現によって宙に浮いていた全てが確定し、完結する。
 前述した通り、語数が増えれば増えるほど意味は限定され、詳細に、鮮明になる。限定とは、例えば時間であり、場所であり、物体であり、方法であり、視点であり、つまり状況である。そして同時に、語数の増加は「宙に浮いている時間」を長くする。
 この「宙に浮いている時間」は、その時間が長ければ長いほど、つまり詳しく説明すればするほど状況を意識に留めて置くことに気を配らなければならず、必然的に理性的になり、流れる時間を遅くし、空間を濃密にする。逆に、その時間が短ければ短いほど、つまり説明を減らせば減らすほど状況を意識に留めておく必要が薄れるため、感覚的になり、流れる時間を速くし、空間を希薄にする。
 では、その証明と効果を知るために、いろいろな組合せを試みる。
 まず、修飾語を省いてみる。ここでもまた、上に述べた状況を一切忘れ、読んだ後で思い出し、比較してもらいたい。

「日本丸が浮かんでいる」

 語が宙に浮いている時間は無に等しく、流れる時間は速い。浮かぶ情景は非常に自由度に富んでいるが、同時に、ほぼ無である。意味が余りにも非限定的であるからである。
 次に、語数を増やしてみる。

「俺とナナは闇夜を貫く細く淡い月光の下、船べりに細い一筋の電飾を施された日本丸が、不気味にうごめく暗黒の大地のような太平洋側の海に、身動きもせず静かに浮かんでいるのを遥か遠くに眺めていた」

 浮かぶ情景は非常に鮮明であり、同時に、不自由である。流れる時間は遅く、宙に浮いている時間は長い。


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