『三年目の作家、として』
七月二十八日、火
深夜の大通りを走っていた。闇だった。アスファルトに反射する外灯が法定速度で流れていた。闇だった。光はほとんどなかった。闇だった。頭上を走る高速道路。闇だった。ガソリンスタンド。闇だった。信号。闇だった。外灯。闇だった。それだけだった。闇だった。
まるで夢のようだった。二人の警官は前のシートでボソボソ雑談していた。まるで夢のようだった。ナナはうつむいて髪から海を滴らせていた。まるで夢のようだった。
まるで、夢だった。
大通りから細い路地に入り、住宅地に出ると、光は全く消え失せた。ヘッドライトが際立った。俺は煙草を取り出した。警官が一瞬振り向いた。
俺は煙草に火を馴染ませた。オレンジ色が強く輝いた。口から煙が流れ出た。俺は煙草をうつむくナナにくわえさせた。オレンジ色が強く輝いた。うつむいて垂れ下がるナナの髪の間から、煙がどっと流れ出た。
再び大通りに出て、少し走った後、警察署のゲートを通過した。くたびれたコンクリートの建物だった。窓から蛍光灯の光が放射されていた。車が停止した。ナナは、眠っていた。
中に案内された。連行ではなかった。案内だった。中には制服の男たちが深夜特有の気だるさでデスクに向かっていた。会話は僅かだった。
案内した二人の警官は二つの安っぽい椅子を引き、ここで待つように言い残して消えた。眠そうに目を開くナナに、婦警がタオルを差し出した。
待ち時間は長かった。一台のテレビの音だけが流れていた。天井に張り巡らされた蛍光灯が、黄色くくたびれていた。ナナは頭を俺の肩に乗せ、再び眠りに就いた。
俺は考えていた。ナナの毛先から、最後の海が滴り、そのまま俺の腕で弾けた。だが、何が先で何が後なのか、何が動いていて何が留まっているのか、未だ分かる気がしなかった。
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