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三年目の作家、として
 警官がドアを開くと、八つのデスクが向かい合わせに並べられた細長い部屋だった。警官は俺とナナを部屋の一番奥に案内した。カメラが立てられていた。
「ここで座って待ってて」
 俺とナナが座ると、間もなく色褪せた作業服の男が部屋に入って来た。頬が痩せこけ、無精髭の生えた、鼻息の荒い老年の男だった。
 ナナが煙草に火を点けた。男は持ってきた書類をデスクに広げ、鼻息を響かせ、黙って目を通すと、俺に手招きした。
「あー、それじゃあ君、写真撮るからちょっとそこに立って」
 そう言って、「26」と書かれた番号札を差し出した。鼻息が響いた。俺はそれを受け取り、カメラの前に進み出た。ナナが煙を吐き出した。
「私は?」
 俺は首を横に振った。鼻息が響いた。
「背、高いねえー」
 男はカメラを覗きながら角度を調節した。鼻息が響いた。ナナが俺を見詰めていた。暴走音は過ぎ去っていた。鼻息が響いた。蛍光灯が、くすんでいた。
 これはどういうことだろう。
「それじゃあ番号札を顎の下に合わせてくれる? そう……もうちょっと左……うーん……ちょっと右、そう、そこ、そのまま」
 フラッシュが飛び散った。
「じゃあ次は、左から撮ろう……」
 フラッシュが飛び散った。
「次は……」
 つまりこういうことだ。俺はやつらに拘留され、そしてやつらにそうさせるやつらに俺は頼っている。
「唯則……」
 アルファロメオもセンチュリーも、何もなかった。ただ、ナナが海に飛び込んで自転車があった。それだけだ。
 ナナが立ち上がった。
「座ってろ!」
 ナナの肩からタオルが滑り落ちた。ナナの口が歪んだ。
「大丈夫、モノクロ写真だ……分かるだろ? だから、座ってろ」
 口を歪めたまま、ナナがゆっくりうなずいた。


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