『三年目の作家、として』
(第九、描写とその効果について。
いよいよ、この理論を形成する最大の目的である「描写」について考えようと思う。これまでも、描写に関する言及は幾度も成してきた。だが、ここで更に付け加えていきたい。
さて、描写と言っても風景描写から心理描写まで様々だが、まず、風景の描写から考える。
私たち人間は、日常あらゆるものを知覚している。例えば、歩いているときは道を知覚し、信号を知覚し、通り過ぎる車や人を知覚している。効果的な描写とは、このような私たちが日常、何気なく風景を知覚する方法に限りなく近いもののことであろう。
では実際、私たちは物体をどのように知覚するのか。列挙する。
第一に、時間、つまり明るさは、何よりも先行する。
第二に、場から個へ移行する。
第三に、近いものから遠いものへ移行する。
第四に、静物よりも動物が優先する。
第五に、目立つものから目立たないものへ移行する。
第六に、大きいものから次第に小さいものへ移行する。
以上が、私が現在思い付く限りである。
もちろん、これら全てが言語に及ぶ知覚ではなく、むしろ、言語にならない知覚がほとんどである。文として書き下ろす場合にも、先に述べた「状況」があれば、全てを書き記す必要はない。
さて、風景描写と言っても、そこに心理描写のような要素が加わったものがある。明喩、暗喩のような比喩の類いである。
例えば、「海のような空」、「思い詰めた空」などである。
ここで注意したいのは、比喩は言葉自体よりも湧き起こるイメージのほうが重要である、と言うことである。上の例で言えば、後者は言葉としてはまだましかもしれないが、イメージとして希薄である。前者は概ね良好である。
ここでより明確に、こうは言えないであろうか。比喩には石や木や川などといった、誰にとっても唯一不二であるような語、言うなれば存在安定語を当てるのが好ましいのではないか、と。
そうすることによって、その瞬間の作者本人にしか分からないような一人善がりの比喩は避けられるのではないか。ただ、全く無くしてしまうのがいいわけではない。必要最低限にするべきである。
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