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MICROMANCE
「ねえ、ほんとに行くの?BAKAのぶんのケーキもあるんだよー?」
「GUU、おばさん帰ったら携帯に電話してよ」
 あいつは小声でそう言うと、片目をつぶってキスをした。
「たのみごとにキス使うなんてひどいよー」
 気がつくと、すぐそばでお母さんが目をそらしてた。なんにもない白カベを見てた。
 あいつは「頼むよ」と顔をしかめて、コソコソ出て行った。お母さんは両手で買い物袋を提げながら「もういいかしら?」と言った。
 お母さんは首を横に振りながらコートを脱いで、ソファーに座ってまた振った。
「どうしてあんな男に引っかかっちゃったのかしらねぇ」
「お母さん、あんまりBAKAのことひどく言わないで。あいつもあいつなりにいっしょうけんめいなんだから」
「そうかもしれないけど……二十五にもなって、定職もなし……それに、年下……はぁぁぁー」
 お母さんはお腹の底からため息をついた。
 あいつと私の両親はケンカ中。二年前にも、私があいつと一緒に住むことでケンカしたけど、そのときはなんとか私が説得したの。でも、今度はちょっと長引きそう。
「みにゃー」
「あーら、ALちゃん、こんにちは」
 ケーキの匂いをかぎつけて、ALがキョロキョロしながら入ってきた。匂いのもとを見つけると、私のヒザに跳びのった。ローテーブルのうえのケーキに手をのばした。
「だーめ。いまALのも持ってきてあげるからー」
「ほらほらALちゃん、お母さんのところに来なさーい?」
 そう言ってお母さんはALを抱きあげた。私がキッチンからALのケーキを持って戻ってくると、お母さんはALにほおずりしてた。ALはもがいてた。
「ほーらALちゃん、あなたのケーキが来たわよー」
 ALはお母さんの胸から跳び出して、ケーキにかぶりついた。
「ALちゃん、大きくなったわねー」
 ALはムシャムシャケーキを食べ終えて、ミルクの残りをピチャピチャなめた。
「最近、太りぎみなの」
 お母さんはALをしばらく眺めると、思い出したように手で髪をとかしはじめた。私がタバコに火をつけると、お母さんは火災報知機みたいに素早く私に目を向けた。
「とうとう、タバコが癖になっちゃったわねえ」
 煙をはくと、窓までのびた。
「ごめんねー」
 私がタバコを吸うようになったのはここ数年。うちの家族はだれもタバコを吸わないし、私も二十才を過ぎるまで吸いたいと思ったことがなかったから、きっと一生吸うことはないんだろうなーって思ってた。カッコよくタバコを吸う女の人を見たこともなかったし。
「やめるのは今からでも遅くないのよ?」
「んー」


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