『MICROMANCE』
「文鳥、GUUかー。なーるほど。髪も鳥の巣みたいだしな」
あいつはALを肩にのせて冷蔵庫を開いた。
「それでね、寝転びながらシゴトするのー」
肩のうえで小さくなって、したを見おろしてるAL。
「……やっぱり、ぐうたらはぐうたらだな」
あいつは冷蔵庫のドアをパタンと閉めた。グリーンアップルケーキを手にしてた。
あいつがソファーに座りながらKIDOくんにケーキを差し出すと、KIDOくんは首を横に振ってハッピーターンの包みを指さした。あいつはまゆげを動かして、ケーキにフォークをつき刺した。
「で、なに書くの?」
「なにが?」
「いや、なにが、じゃなくてさ……小説家になるんだろ?なにか書くんだろ?」
私は二人の顔を見回した。
「そう言えば、小説ってどんなの?」
あいつはケーキを食べる手をとめて、KIDOくんと顔を見あわせた。
「そりゃあ……なぁ、KIDOくん?」
「ええ、そうですよねぇ……SATOさん」
「なんなの?」
二人は背中をまるめて紅茶を口にした。
「……想像したり、考えたり、実際に起こったりしたことを言葉で表現した、も、の?」
「そんな、感じ、ですよね」
「なあに、それ?」
あいつがソファーでのけぞった。
「んー……とにかくなんでもいいから言葉を書けば小説なんじゃないのー?」
KIDOくんはカップをおいた。
「そんな、感じ、ですよね」
「なんでも、いいのー?」
「あー」
「日記みたいなのでも?」
「いいんじゃなーい?」
あいつがタバコに火をつけた。
「でも、そんなのにお金を出して買う人がいるの?」
あいつのはいた煙が遠くまでのびた。
「そりゃあ……ねぇ、KIDOくん?」
「ええ……あ、ほら、他人の日記って、盗み見したいじゃないですか」
KIDOくんもタバコに火をつけた。
「そうかなあー」
「そうだよー。まあたとえそうじゃなくてもさ、おもしろい日記だったら買ってもいいと思うだろ?」
「……そうかなあー」
ALがあくびをした。あいつは、なにかがのどに引っかかってるみたいな顔してタバコを持ってる。KIDOくんは、なにかがのどにつまってるみたいな顔をしてタバコを持ってる。
「……あの」
「なあに?」
KIDOくんが灰を落とした。
「たぶん……小説とは何か、じゃなくて、YASUKOさんが何を書きたいのか、だと思うんですよ」
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