『MICROMANCE』
あいつが身をのり出して灰を落とした。
「GUUは、なにを書きたいの?」
「うーん……ALにミルクあげたらめちゃめちゃかわいかった、とかー……」
ALが目を閉じてまるくなった。
「こ、こまけーなあ」
「……あ、それとねー、ロマンス!」
KIDOくんが顔をあげた。
「細かい事と、ロマンス……ミクロ的な事と、ロマンス……コンセプトはミクロマンス、ですね?」
「MICROMANCE、かー……いいねー。そうだ、タイトルもそれにしよう!」
KIDOくんが笑った。
「スペシャルサンクスのところに『KIDO』って、入れてくださいね」
あいつも顔をあげた。
「俺も!」
……それで書きはじめたのが、いまあなたが読んでるこの小説なの。どう?おもしろい?やっぱり、ダメ?
あーあ、こうやって聞いても、あなたがどう思うのかちっとも聞こえてこないよ。私とあなたはおんなじ紙に向かっているのに、私とあなたは向きあわない。
めちゃめちゃ悲しい。
でも、いいの。もし、あなたにつまらないって言われても、私はこういうのしか書きたくないし、書けないの。
みんなに「よかったよー」って言われたいけど、たぶん、ムリ。だってそれは、私が好きなものをみんなも好きだって言ってるのとおんなじだから。
……あ、でも、買ってね。
「で、いつから書き始めんの?」
あいつはフォークにささったケーキのかけらを口にした。
「お金がたまったら」
「はぁ?モグモグ、なんで、金が、要るんだ?」
「だって、ワープロがないとー……」
「なーんで、モグモグ、だよ?紙とペンで、モグモグ、いいじゃん」
「だってー……」
あいつは口のケーキを紅茶で流し込んだ。
「だって、なんだよ?」
「だって、書き間違えたらめんどくさいし……寝転んでラクラク、じゃなきゃ……それにー……」
「それに、なんだよ?」
「……漢字、よくわからないし……」
あいつは口を半開きにして、心の底からあきれた顔をした。
「それで文豪、ねぇ……まぁ、漢字なんて分からなくたっていいんじゃない?かえって読みやすかもしれないし……あー、そう言えばホワイト・デー、もうすぐだよなー」
「どうしてホワイト……だめー!」
あいつは紅茶を口にした。
「いいよ。そんぐらいしてやるよ。GUUにこれ以上家の中でごろごろされてるよりぜんぜんマシだよ」
「ぜっっったいだめ!BAKAはこのあいだギター買ったばかりじゃない!お金なんてないはずー!」
「いーから」
「ダーメ!」
「いいっつってんだろぉ!っと失礼、し、ま、し、た」
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