『MICROMANCE』
2
私たち三人は、近所のスーパーマーケットに買い物に出かけた。KIDOくんにはもう少しガマンしてもらって、夕食を先に作ってから飲もうってことになったの。
今夜のメニューはペンネ・アラビアータ、セロリとニンジンのサラダ、あとはチーズとかポップコーンとかヨーグルトとか、いろいろ。
ペンネの当番はあいつとKIDOくん。私はサラダ。あいつに持たせたグレーの買い物カゴに、つぎつぎ材料を入れていく。
まんまるタマネギ、ニョキっとセロリ、ぴろぴろサニーレタス、オレンジニンジン。あいつがカゴをのぞき込む。
「……ん?あれ?うちにニンジンあるよ?」
カゴのなかでニンジンが転がる。
「そうだったー?」
「ねえー、KIDOくん?いかに俺ばっかりメシ作ってるか分かるでしょー?」
「ははは」
「バーカ」
私はニンジンをカゴからとり出して、あいつをにらんで、棚に戻した。
天井からまっ白な明かり。蛍光灯が走ってる。棚から冷たい空気。乳製品のコーナー。ミルク、バター、マーガリン、チーズ。その次はヨーグルト、プリン、ゼリー。曲げたウデにカゴをかけて棚をのぞき込んでる買い物客の列。その後ろから棚に手をのばす列。そのなかの私たち三人。
卵のコーナー。トウフのコーナー。コンニャク。ハムにソーセージにベーコン。表示よりさらに二割引き。
「私、ちょっとお出かけしてくる」
あいつがベーコンを手にして答える。
「いってらっしゃい」
私はこっそりアイスのコーナーへ。
人込みのすきまを通り抜ける。パーマのおばさん、香水の女の子、スウェットパンツのおばさん、エプロンの女の子、リュックの男の子、パーマのおばさん。体を横に向けて、すり抜ける。ぶつかる。「ごめんなさい」立ちどまる。
……見ちゃった。
スーツ姿のキレイな女の人。シゴト帰りのOL。短い栗色のストレートヘアー。肩にかけたバッグに化粧水を入れた。きっと、これがマンビキ。はじめて、見た。
でもどうして?
女の人が振り向いた。めちゃめちゃやつれた顔してる。
だからなの?
女の人は歩き出して、立ちどまった。目が、あった。感情をなにも込めてない目。じっと私の目を見つめてる。私は目を背けた。
どうすれば、いいの?
向こうからあいつとKIDOくんが歩いてくる。私はその場から逃げ出した。
「どうしたんだ?」
「どうしたんですか?」
二人は顔だけ振り向いて、自分たちの後ろにかくれた私を不思議そうに見た。二人の肩のあいだから、あの女の人が立ち去るのが見えた。キレイな足が遠ざかる。
「どうしてー?」
私たちも歩きだす。
「なにが?」
「うんー……あのね、いまそこで……」
「痛てっ」
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