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MICROMANCE
 KIDOくんは控えめにキスすると、ALを私に手わたした。体をダラーンとたらしてされるがままのAL。
「じゃあ俺、先にペンネのほう作りますね」
「うん」
 私はALを抱いてまっ赤なソファーに座り、ヒザにのせてタバコに火をつけた。あいつの電話してる声が小さく聞こえる。キッチンからトントンまな板の音がする。
 青いローテーブルにはオレンジ色の灰皿だけがポツンとのってる。クリップライトで照らされたパキラの影が私の足もとまでのびてる。
 となりの部屋にはベッドが見える。ベッドにはリンゴの柄が入った白いカバーがかけられてる。その脇にはあいつのギターが三本立ってる。ALが私を見あげてないた。
 だめ……やっぱりALはわたせない。どんなこと言われてもいい。私が守ってみせる。だれよりも愛してみせる。だから……お願い。
 白い冷蔵庫が「ぶおおおーん」ってさけんだ。なんだかいつもより高くて長い声。ため息と一緒にはいた煙は、かすれてのびた。その先にあらわれた、あいつの顔。
 あいつは伏目がちに立って、両手を力なくたらしてる。
「GUU……」
 悲しげにつぶやいたあいつの声。私はALを抱く手に力を込める。
「やっぱりALは……」
 KIDOくんも手を休めてこっちを見てる。ぐつぐつナベの音。漂うトマトの匂い。
「……EIJIの飼ってる猫の子供だってさぁ!ALくぅーん、おいでぇぇ!これからもよろしくねぇぇ!」
 あいつは私のヒザからALを抱きあげると、何度も何度もキスをした。
「……ばか……バカー!」
 私はALごとあいつに抱きついた。涙が出た。あいつも笑いながら泣いてた。KIDOくんは笑いながら鼻をすすり、また作りだした。
「……みんな、みんな大好きー!」
 抱きあったままぐるぐる回る私たちにはさまれたALの後ろ頭。ピンと立てた耳。あいつの肩をつかむ両ウデ。
「今日はお祝い、ですね?」
「うん、ALを囲んでパーティー!」
「戸籍などという拘束を全く必要としない、愛を分かつ家族、という死ぬまで外れることのない首輪をつけた記念日として……」
「ははは、やたら聞こえが悪いですね」
 あいつがまたALにキスした。
「ALと俺には違う血が流れていようとも、同じ家族という意識が流れている。意識は確実に血を越える!いや、血とは意識のことだ!刷り込みは両方向に働き……」
「いつまでもALと愛しあいます記念ー」
「そう端的に言うなよ。俺だってなぁ……」
「あ、YASUKOさん、できましたー」
 KIDOくんがナベをかき混ぜながら火をとめた。
「あー、ひどーい。BAKA、なんにもやらなかったー」
「あ……KIDOさん、ごめんな、さ、い」
「ははは、いいんですよー」


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