『MICROMANCE 』
水の流れる音。KIDOくんが手を洗ってる。
「ダメだよー」
「あ……じゃ、じゃあ俺……そ、そうだ!セッティングから後片付けまで、全てやらせていただきます!それも完璧なる手際で!」
KIDOくんは笑顔で手を拭いてる。
「ほんとに、いいですよー」
「ダーメー。じゃあBAKA、それでいいからしっかりやりなさい」
「はっ。仰せのままに!」
私はサラダにとりかかった。
セロリの筋をとり、ニンジンの皮をむく。それを千切りにして、お皿に敷いたサニーレタスにのせる。ガリガリ、トントン。
今度はドレッシング。ボウルに塩、コショウ、赤ワインビネガーを入れてよく混ぜる。そこに、オリーブオイルを少しずつ加えながらとろっとするまでさらにかき混ぜる。シャカシャカシャカ。
できあがったドレッシングをさっきの野菜にかけて出来あがり。
「BAKA、できたよー」
「はいっ、後はお任せを!」
あいつはわざとらしく忙しそうに働いた。
冷蔵庫から飲みかけの白ワインをとり出して、料理をローテーブルに運ぶ。ときどきヒタイの汗を拭くマネをしながらせっせと運ぶ。
KIDOくんは落ち着かない様子で座ってる。私はタバコの煙をあいつの顔に吹きかける。
「遅ーい!」
「は、はいっ。申し訳ございません!」
ALが私のヒザのうえで体を震わせるほど大きなあくびをした。
「王様も待ちくたびれてるよー!」
「……只今、完了致しました!」
あいつはソファーに倒れ込んだ。その向こうでKIDOくんが「お疲れさまでした」とささやいた。
「疲れたー!」
「KIDOくんのほうが疲れてるんだよー?」
「ははは、そんなことないですよー」
「ま、とにかくALの出所が分かってほっとしたことを祝して……」
私たちはグラスをかかげた。
「ははは、急にチープになりましたね」
「そうだよー」
「まぁまぁまぁ、いいじゃあないの。とにかく、チァーズ、乾杯!」
私たちはグラスをカチンとあわせた。ALは自分のお皿にのせられた山盛りの夕食にかぶりついた。ほんとはダイエットちゅうだけど、記念日だからめちゃめちゃ多い。
「でーも、不思議だよなー。ALがいるだけでさ、全然家の雰囲気違うんだよ。見てるとなーんか、なごむって言うかさ。ALが来る前はGUUとケンカばっかしてたけど、今はほとんどしないしなー」
あいつはすぐに飲み干して、グラスにワインをつぎ足した。
「それに最近、やたら生活が規則正しいんだよー。朝は朝メシやんなきゃないから早起きするし、外に出かけるときも晩メシやんなきゃとか、遊んであげないとストレスたまるかなぁとか思うから、ちゃんと帰るようになるんだよねー」
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