『MICROMANCE』
サラダもワインもペンネも、めちゃめちゃおいしい。KIDOくんもワインを飲み干した。
「子供ができた、みたいなもんですか?」
「うーん……子供でもあり、友達でもある……両方、かなぁ。KIDOくんも飼ったらー?」
「ははは」
ALはご飯を食べきれずに残して、ゴロンと横になって、ペロペロ毛づくろいしはじめた。
「おっきくなったよねー」
「そうだなー」
「そうですねー」
ALは三人に見られてるのに気がついて「みゃー」とないた。
「AL、みーんなに見られて恥ずかしいんでしょー?」
「どれどれ」と、あいつはALを抱きあげてヒザにのせた。
「やっぱり、ちょーっとデブかなぁー」
「明日からまたダイエットだねー」
「ダイエットしてるんですか?」
あいつは片方の手でヒザのうえのALの背中をなでて、もう片方の手でワインを飲んだ。
「俺もGUUも、デブ猫嫌いだからねぇ。体にもよくないらしいし。ALってさ、家猫だろ?だから余計、運動不足になりやすいらしいんだよね」
「……なーんか、私のこと言われてるみたい」
確かに、このあいだお腹にさわったとき、ちょっとやばいかなーって思った。たぶんシゴトをやめてから一日じゅう家でALとごろごろしてることが多くなったからだと思う。ほんとに家猫みたいなの。
このあいだなんか、あんまりヒマだったから雑貨屋さんでも見に行こうと思って準備したの。でも、玄関のドアを開けてびっくり。
太陽が高い時間に外に出るのがあまりに久しぶりすぎて、太陽ってこーんなにまぶしいものなのかあーって。後ずさりしてやめちゃった。
そう言えば、ちっちゃいころ、テレビで見たアメリカの太陽があまりにも大きくて、自分が見てるのとおんなじ太陽だなんて信じられなかった。だからずっと日本とアメリカでは違う太陽がのぼるんだと思ってた。
「ねえ、月よりも太陽のほうがおっきいって、実感できる?」
「はあ?」
「私、頭ではわかってるんだけど、いまだに信じられないの。それと地球がまるいってことも」
KIDOくんはサラダをさしたフォークをとめた。
「……確かに、近過ぎたり、遠過ぎたり、小さ過ぎたり、大き過ぎたりするものは、実感として把握できないかもしれないですね」
あいつがタバコに火をつけた。
「触れることのできない真理。科学的真理。でもすごいよねえ、最初に太陽と月の大きさと距離を三角関数で測ろうなんて考えついたやつ」
「でも、怖いですよね。何か最近、知りたくなかったことまで知らされてしまうって言うか」
「そうだよなー」
KIDOくんは思い出したようにフォークを口に運んだ。あいつの口から煙がのびた。
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