『MICROMANCE』
「その人だって、骨折したくてしたんじゃないよ?」
「そんなこと言ってんじゃないよ。なんで事故る可能性のあることを、こんなときにやってんのかって言ってんだよ。分かるだろ?今回だけじゃない。あいつ、ライブ前になると必ずと言っていいくらい、どっかケガすんだよ。それでいかにも不幸だったみたいに弁解してさ。不幸なんかじゃない、お前のコンディション作りが悪いんだっつうんだよ」
あいつはタバコに火をつけた。
「でも、やっぱりかわいそうだよー。だってその人、友達なんでしょー?」
あいつは勢いよく煙をはき出した。
「友達だけどさ、それとこれとは別問題だよ。俺たちは友達と仲良くするために音楽やってんじゃない。やりたい音楽があって、そこに集まった結果として友達になるんだよ。だからそれができないんだったらやめてもらう。友達としては続けられるかもしれないけど、一緒に音楽やってくことはできない」
「その人、それで納得するのー?」
あいつはせわしなく灰を落とした。
「しなくてもやめてもらう、たとえ友達じゃなくなったとしても。冷たいようだけど、俺にはあいつと付き合ってくことよりも、音楽のほうが大切なんだよ」
私と音楽だったら、って聞こうとしてやめた。バカみたい。
私はあいつに音楽をすててほしいなんて思ったことないし、それどころかあいつがキーボードに向かっていっしょうけんめいやりはじめると、遠くからALと一緒に「がんばれー」って応援してる。
あいつには世界中のステージに立つような人に絶対なってもらいたいし、それにくっついて世界中を旅行するのが私の夢。
「あのー……俺、ちょっとタバコ買ってきます」
KIDOくんは目を伏せたまま立ちあがると、ライターをポケットに入れて出て行った。あいつは自分のタバコの箱を開けて「俺のも頼めばよかったなー」って言った。
「ところでGUU、なにか考えてんの?そのー、なんだっけ?MICROMANCEの内容をさ」
私は梅酒を飲んだ。あー。顔がカアーって熱いー。
「言わなかったー?ALがかぁわいいー、とかー……」
「ロマンスとか、だろ?それは分かってんだけどさ、テーマだよ、テーマ」
「テーマ?MICROMANCEだよー?」
「いや、それはタイトルでしょ」
ALがあいつのヒザのうえで寝返りをうった。
「うーん、それじゃーあー……ささいでー、ロマンチックなー、ことー?」
「いや、それは……表現方法、でしょ?そうじゃなくてさ、その方法を使ってなにを表現するのか、だよー」
あいつの手に握られたハイネケンの缶。
「表現って……例えばー?」
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