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MICROMANCE
「例えば……そうだなあ……喜びとか、悲しみとか、怒りとか、絶望とか、いろいろあるじゃん。感情じゃなくても、例えば愛についてとか、美についてとか、社会構造の仕組みについてとか、なにか自分の内で考えたり感じたりしたものを形にして外に表すことだよ」
「じゃあー、やっぱりー、ALがめちゃめちゃかわいい、とかじゃなーい?」
 私はグラスをローテーブルにおいた。
「うーん、いやー、まぁそうなんだけど……でもさー、それだったら小説なんてめんどくさいことしないでさー、ALはこんなにかわいいんだよって話して歩けばすむことじゃないかー?まあ話せる人数には限りがあるだろうけどさー」
「でも、それじゃあシゴトにならないじゃなーい」
「仕事って言うけどさ……なんだよ、もしかして、仕事がないから小説書こうって思ったのか?」
「そうだよー。だってー、寝転んでー、好きなこと書くだけでいい、って言うからー」
 おいたグラスの周りに水たまりができてる。
「……それじゃあ、ダメ、なのー?」
「いやぁ、だめって事はないだろうけどさぁ……」
 足もとにのびてるパキラの影。五枚の葉。
「じゃあー、BAKAはー、どーして音楽やろうって、思ったのー?」
「俺?俺が音楽やりたいって思ったのはさ、レコード聞いてて『ああ、ここはもっとこうしたほうがいいのになー』とか『どうしてこういう曲がないのかなー』って思ったからなんだよ。それでそのうち頭の中で曲が浮かぶようになって『ああ、これいい曲だな』って思うと、それを形にして何度も聞いてみたくてしょうがなくなってさ。だから俺の場合、表現することに必要性がある、わけだよ。うんうん」
 のばしたまえ足を交差させて眠ってるAL。
「お金はほしく、ないのー?」
「そりゃあ金は欲しいけどさ、目的ではないんだよ。目的は、自分にとってこれ以上ないって曲を書くことだから。売れる売れない、じゃなくて」
 スリッパからのぞく、私のパープルの足のツメ。動かしてみる。
「でも、売れたら、嬉しいんでしょ?」
 あいつはALのしっぽをつかんで、はなした。
「そりゃあ、売れたら素直に嬉しいよ。売れるってのはさ、例えば音楽なら、その曲を何度も聞いてみたい、じっくり一人で聞きたい、自分の手元に置いておきたいって思うから買うわけだろ?それってさ、自分が認められてるってことだからやっぱり嬉しいんだよ。でもさー、使い古された言葉だけど、自分が好きで書いた曲が売れるのは嬉しいけど、好きでもない曲を書いて売れても嬉しくないんだよなー。例えばさ、自分の顔で女にモテんのは嬉しいけど、こういう顔がモテんだろうなって整形してモテても嬉しくない、みたいにさ」


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