『MICROMANCE』
灰皿をとりあえずコンロのうえにおいてドアからのぞいてみた。すぐ近くであいつが、うつむくKIDOくんの正面に立って、なにか話してる。
パープルのツッカケに足をつっ込んで、ツカツカ歩いて近づくと、あいつは私に気がついた。タバコを吸ってはき出すと、澄んだ夜空が汚れたみたいだった。
「どうしたのー?」
「……ちょっと、な。KIDOくん、とにかく家に入ろう」
あいつはうつむくKIDOくんの肩を抱いて歩きだした。私はもう一度煙をはいてみた。こんどは風にのって高く混ざって行った。
玄関のドアを開いたら、ドーッって水の音がする。あいつがキッチンでなにかを水に流してる。近づいて横からのぞくと、透明な包みから白いさらさらの粉を流してた。
「なに、してるの?」
「KIDOくん、これやろうとしてたんだよ」
「なあに、これ……もしかしてー!」
あいつはうずを巻いて穴に流れてく白い粉を見つめたまま、ゆっくりとうなずいた。
「ちょっとKIDOくん!どうしてこんなことするの!」
KIDOくんはうつむいたまま「は、はは」と力なく笑った。
「笑えるようなことじゃないでしょ!ちょっとここに正座しなさい!」
「GUU、なにもそこまでしなくても……」
「BAKA、これは大変なことなんだよ!一人の友達がダメになるか、ならないかのせとぎわなんだよ!」
私があいつを黙らせると、KIDOくんは私の正面にゆっくり正座してうつむいた。
「いーい!KIDOくん、君、ロクデナシだよ!どうしてこんなことするのか、ワケを話しなさい!」
なぜか吹き出したあいつをにらんで黙らせた。KIDOくんはためらいながらゆっくり静かに話しだした。
「俺……大月先生のアシスタント、クビになったんです」
「写真の?」
KIDOくんは小さくうなずいた。
「……先生は、アシスタントのプロが欲しかったんです。アシスタントって、いかに先生が気持ちよく撮れるか、そのことをいつも考えていなければいけないんです。安い手当で、毎日毎日、ほとんどの時間をそれにつぎ込んで。だけど……だけど俺は、アシスタントのプロになりたいわけじゃない、写真のプロになりたくてアシスタントになったんです!大月先生につけばその道が開ける可能性が高いから、だから先生のアシスタントになりたくて……それでやっとの思いでなれて……確かに少しは技術を盗むこともできました……だけど、分からなくなったんです。自分はプロの写真家になりたいのか、それとも……とにかく何も、かも」
キュッと蛇口をひねる音がした。
「……でも、だからって、こんなことしていいことにはならないんだよ?」
私の言葉をさえぎって、あいつが話しだした。
「GUU、KIDOくんはさ」
2-15へ
BBSに感想を書く
著者へメール
寄付
back
Warning: require() [function.require]: URL file-access is disabled in the server configuration in /virtual/logos/public_html/www.logos-web.net/hp/d/l/kid/m/26.html on line 107
Warning: require(http://pagead2.googlesyndication.com/pagead/show_ads.php) [function.require]: failed to open stream: no suitable wrapper could be found in /virtual/logos/public_html/www.logos-web.net/hp/d/l/kid/m/26.html on line 107
Fatal error: require() [function.require]: Failed opening required 'http://pagead2.googlesyndication.com/pagead/show_ads.php' (include_path='.:/usr/local/lib/php') in /virtual/logos/public_html/www.logos-web.net/hp/d/l/kid/m/26.html on line 107