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MICROMANCE
 3

 私はいま、まっ赤なソファーに寝転びながらワープロに向かってる。ときどき足をバタつかせながら、あなたが読んでるこの小説を書いてる。パキラの新芽を横目で見ながら、私のかわいい五本の指が踊るように……動いたらいいのに。
 私がいま向かってるのは、ワ、タ、シ、の、黄色いノート型ワープロ。先月の終わりにあいつが約束どおり買ってくれた、かわいいーワープロ。まっ赤なソファーにのせても青いローテーブルにのせてもぴったり。どこにのせてもぴったり。もー、ほんと、めっちゃめちゃかわいいーの。
 でもね、最初は黄色じゃなくて黒だった。あいつといろいろ電器屋さんを回ってみたんだけど、どこに行っても黒かグレーのワープロしかなくて、私、どーしても黄色のじゃなきゃ嫌だったから、あいつにぬってもらったの。
 その日はもう一日中うれしくてうれしくて、画面を開いたり閉じたりするだけで「きゃー」ってさけんでた。ALも一緒に「にゃー」ってさけんでた。あいつも「うるさーい、早く書けー」ってさけんでた。
 いまも抱きしめたくてウズウズしてるけど、書くほうが優先。文豪はキビシイのだ。
「にゃー」
 となりでALがボールペンにじゃれてる。白くて太いボールペン。あたまにゴムでできたアマガエルがくっついてて、ノックするたびに「ゲーコ」ってなく。
 このカエルがはじめて家にやってきたとき、ALはソファーの陰に隠れて、じっとこの得体の知れない緑色のものの様子をうかがってた。
「なんだあ、あいつはー?」
 いつまでもピクリとも動かないカエルの目をさけて、後ろからゆっくり近づく。かるくつついて逃げる。つついて逃げる。それを何度もくり返して、やっとALはカエルと仲良しになった。
 いまでは頭にかみつくほどの愛しよう。愛されすぎてカエルはボロボロ。一時は手も足もちぎれたけど、私のブラックジャックのテクニックで治してあげた。今でもその手術の跡(ホチキスの針)が残ってる。
「ふあーあーあー」
 あいつがとなりの部屋から起きてきた。
「あれ、GUU、どうしたの?こんなに早く起き……お?もしかして、仕事中?」
「そう。いま、い、そ、が、し、い、の」
「へえー!どれ、ちょっと見せてよ」
 私は起きあがって、となりに座ったあいつにワープロを手わたした。タバコに火をつけた。あいつの横顔。はれぼったい真剣な目。
「結構、書いたねー」
「うん」
 ローテーブルには、いっぱいになった灰皿と私の黄色いマグカップがのってる。マグカップからは湯気がのびてる。さっきいれたばかりのコーヒー。
「でもこれ、ほんとそのまんまだなー。日記みたい」


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