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MICROMANCE
 あいつは立ちあがってのびをすると、となりの部屋に着替えに行った。私はタバコを消した。ソファーには私の黄色いワープロがちょこんと残されてる。開いたままの青白い画面には、ぎっしり文字が並んでる。
 スイッチを切って画面を閉じると、ALが私を見あげてた。かわいい緑色の目。
「ALー、今日はBAKAと二人っきりでデートなのー。いいでしょー。だから、ALはうちでお留守番だよー?」
「にゃー」
「どーしてそんなうれしそうな顔するのー?一人ぼっちになるのがそんなにうれしいのー?」
「にゃー」
「GUUの顔は見飽きたってさ」
 あいつが着替えて部屋から出てきた。
「そーなの、AL?」
「にゃー」
「にゃー?ひどいなあー」
「ALだって、たまには一人になりたいよなー?」
「にゃー」
 あいつはALを抱きあげてキスした。今度は私がしたくする番。
「ALのバーカ」
 となりの部屋に行ってクローゼットを開く。少し迷ってから黒いパンツとセーターをとり出す。着替える。鏡をのぞき込む。今日もくるくるスパイラル。
 まゆげを書いて、まつ毛をくるんとカール。マスカラ。ファンデーションと口紅を薄く薄く。
「まだー?」と聞こえるあいつの声を聞き流してマニキュアのキャップを回す。今日はぴかぴかシルバーにする。ツメのつけねから先端へ。フーフー。ムラなくぬって、フーフーフー。
 疲れたー。
 ベッドに倒れ込んでタバコに火をつける。鏡にはタバコをくわえて横になる私の姿がうつってる。
 あーあ、私がもおーっとかわいかったらなあ。
 私、横顔がサルみたいなの。したに行けば行くほど「あれれれ?」って盛りあがる。口はデカイしソバカスもある。いまはそうでもないけど、私、ちっちゃいころ、自分のソバカスが大嫌いだった。
 それで小学校六年生くらいのとき、お母さんに「一生のお願い!私、どーしてもほしいものがあるのー」ってたのみこんで、それまでちょっとずつためてた貯金をぜーんぶおろして、ソバカスの消える化粧水を買ったの。私の一大決心。
 でも、ちーっとも、消えなかった。おつかいとかお手伝いとかしていっしょうけんめいためた貯金が一瞬にしてなくなって、自分のソバカスはちっとも消えなくて、あまりの悔しさに「お母さあーん!」ってジタバタしながら泣きわめいたの。
 お母さんはとなりでジタバタしてる私を横目に、洗濯物をたたみながら「大人になったら消えるわよ」って慰めてくれた。
 この年になって、確かに少しは薄くなったけど、それはあのころよりも日にあたらなくなったからだと思う。あのころは毎日、学校が終わってから日が沈むまでずうっと外で遊んでて、つねに日焼けしてる子だったから。
「なあ、まだー?」
 あいつが顔をのぞかせた。


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