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MICROMANCE
「小学校で習ったやつでしょ?うん、たぶんあんな感じ。最初のうちはうーんって考えながら書いてるんだけど、だんだん書いた後から考えるようになって、気がつくと考えることが追いつかなくなってるの。BAKAも音楽やってて、そうなることないー?」
 あいつはコーヒーを口に流し込みながら、大きく二回うなずいた。
「あれって、なんなのかなあ?」
「反射、モグモグ、だよ、反射」
「ハ、ン、シャ?」
 あいつはやっと飲み込んで、ちゃんとキレイに話せるようになった。
「反射って言うかさ、条件反射みたいな感じだと思うよ。例えばさ、熱いものに触ったときには考えるよりも先に手を引っ込めてる、みたいに、イメージが理性を通さずに直接言葉を出してるんだと思うよ」
「ふうーん……」
 あいつはフォークにさしたポテトを口に入れようとして、やめた。
「……本当に分かってんの?」
 私はココアを口にした。
「言ってることは、わかってるよ?ただー、共感できないだけー」
「んー……じゃあさ、GUUは自分が調子に乗ってしゃべりまくってるときに、いちいち頭の中で考えてからしゃべったりするか?」
「うーん……」
 あの男の子がテーブルのしたで足をバタバタしてる。
「しなーい」
「それと同じなんだよ、GUUの言ってる状態は。ん、いや待てよー。考えるっていうのは、頭の中でしゃべるってことなのかー?だとしたら、なにが違うんだ?冷静さ?いや、理性も自分自身を見ることができない……」
「ねえー、ちょっとー、BAKAの言ってること、なんとなくわかったからー」
「あ、ああ」
 私はツナサンドを手にした。レタスと卵がどっさりトーストにはさまれてる。あいつはポテトを次々に食べた。
「じゃあー、それとは逆でー、ちいーっとも書けないときがあるのは、どうしてなのー?」
 となりのテーブルの犬……確かジャニス、が、長い毛のあいだからちらっと私を見た。
「お、なかなかいい質問するじゃん。それはねー、GUUが『書かなくちゃー』と思うGUUになって、実際に書くGUUを外化してしまうからなんだよ。そうだなあ……例えば、街を歩いてて奇麗な女……いや、カッコいい男、か……とすれ違うときに、自分の歩き方を妙に意識しちゃって、うまく歩けなくなったりするだろ?それは、歩く自分を外化してしまったからなんだよ」
「そんなふうにならないけど」
 あいつはサンドの残りを食べようとして、またやめた。
「……ま、まぁー、要するに、自分の位置の問題なんだよ」
「なあに、それ?」
「あー……本当の自分って、知ってる?」
「ほんとの、自分?」
 私はタバコに火をつけた。


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