『MICROMANCE』
「そう。本当の自分の周りにはさ、イメージを作る部分とか、言葉を作る部分とか、感情を作る部分とか、いろいろな部分の自分があって……あ、もちろんそれは全部自分なんだけど、なんて言うかその、自分の中の自分って言うかさ……」
私は煙をはいた。
「自分のなかの自分?」
「そうそう。人間ってさ、イメージとか感情とか理性とか欲求とか、指令を出すところが増え過ぎちゃってるんだよ。でもさ、それを一つにする必要があって、その一つにする部分が本当の自分って言うかさ。もし本当の自分が一つしかないとするなら、だけどね」
そう言うと、あいつはサンドの残りをぜんぶ口に入れた。
「……なに言ってるか、ぜーんぜんわからない」
「俺も自分で言っててよく分からないんで、す、け、ど、ね」
タバコを吸いながら、あいつの言葉を頭のなかでくり返してみた。だんだんぐちゃぐちゃになってきた。
「それでー……あー!その自分はなんなのー?」
「なんなの、って……さあー?」
あいつはのんきにコーヒーなんか飲んでる。
「さあー、じゃないでしょー?イライラー!ちゃんと責任とってはっきりさせてよー!」
「うーん……じゃあー、切り替えスイッチ。外から入ってきたり自分の中で発生した刺激に対して、理性とか欲求とか感情とかの指令系の中で一番強く反応した部分の自分に従って体なりなんなりを使って対抗するように切り替えるスイッチ、とでもしとこう」
「じゃあ今話してるこの私はどの私なのー?」
「耳から入ってくる言語刺激によって発生したイメージに対して経験の中の理性で処理し切れないことから起こる不安定な感情を解消するべく経験の中の言葉と体の動きを使用させるスイッチを入れた、その部分のGUU」
「きゃー!」
さけんだらスッキリした。あやうくバカがうつるとこだった。まわりのテーブルから違う意味でアツイ視線を感じるけど。
「人間は分からないものが怖いからなー。だからそれが分かったり分かったつもりになったときにはむちゃくちゃ気持ちよくなるんだよ。まあ、そうじゃなくても、分からなくていいや、とか、それはそういうもんなんだ、とか思えば怖くはなくなるんだけどな」
「うん、わからなくていい」
私はタバコを吸った。
「そ、そうねえー。まあ、でも、考えたり感じたりしてこそ自分なんだから、ほんとの自分は自分じゃないとも言えるんだけど……」
「それで、」私は煙をはいた。「言葉ってどこからやってくることになったのー?」
3-10へ
BBSに感想を書く
著者へメール
寄付
back
Warning: require() [function.require]: URL file-access is disabled in the server configuration in /virtual/logos/public_html/www.logos-web.net/hp/d/l/kid/m/37.html on line 99
Warning: require(http://pagead2.googlesyndication.com/pagead/show_ads.php) [function.require]: failed to open stream: no suitable wrapper could be found in /virtual/logos/public_html/www.logos-web.net/hp/d/l/kid/m/37.html on line 99
Fatal error: require() [function.require]: Failed opening required 'http://pagead2.googlesyndication.com/pagead/show_ads.php' (include_path='.:/usr/local/lib/php') in /virtual/logos/public_html/www.logos-web.net/hp/d/l/kid/m/37.html on line 99