『MICROMANCE』
「だ、か、らー、経験、感情、イメージ、理性、その他諸々の指令系の部分のGUUが言葉に変換する部分のGUUと結びついて発生するものなんだよー。GUUが怖くなったってのは、理性じゃない部分から言葉が出てたことに対して『言葉は理性だけから出る』っていう偏見がびっくりしただけのことー。言葉はさ、理性以外からも出るんだよ。だから自分が発した言葉に自分が考えさせられるってことが起きるんだよ」
「もういいよー」
私はタバコを消した。灰皿にはさっき吸ってた吸い殻が転がってる。私は新しい吸い殻をその吸い殻に寄りそわせて、おいた。残りのツナサンドを手にした。
「……でも、もしかして、BAKAはバカじゃないのー?」
「え?いや……スミマセン、実は全てデタラメでした……そう言うことによって、私は責任から逃れたいと思います」
あいつは自分のお皿に残ったポテトをつつきだした。
「まぁ、全ての言葉はGUUから出てくるけど、それは経験からも出てるわけで……だけど経験ってのは、例えば人から聞いた言葉をそのまま出したら純粋な自分だって言い切れないわけで……いや、待てよ。自分で自分を見ることができるのって理性だけじゃないのか?もしかして理性って自分じゃない??理性は社会???じゃあ今考えてる自分ってなに?パラダイムの中で生きる特殊……」
私はツナサンドを飲み込んで、手についたカスをお皿に払い落とした。
「バーーーカ。やっぱりバカだ」
となりのテーブルにいた、あの男の子とそのお母さんとその飼い犬は、いつのまにか女の子三人のグループになってた。ココアを飲みながら、私は振り返った。
空いてるテーブルがのほうが多いくらい。お店はガラガラ。アフロの店員さんは、カウンターの向こうでおしゃべりしてる。カベにかかったまるい時計が動いてる。
「もう、三時だよ」
あいつはタバコに火をつけてた。
「え、もーお?ああー、こうして休日は何事もなくいつの間にか過ぎて行くのだー。休日とは一体なにを休む日なのか。それは仕事、シゴト、しごと?」
食べ終わったお皿に残ったマヨネーズ混じりの水のなかに、フォークのカーブが沈んでる。ココアとコーヒーのあいだでは、プラスチックの灰皿がくすぶってる。
あいつのタバコの煙をくぐり抜けて、となりのテーブルの女の子たちが出て行った。お店のまえの駒沢通りをいろんな車が横切ってく。そのたびに窓に反射する光が、ここから見えない太陽の高さをとぎれとぎれに教えてくれる。
「ねえ、サンダル見に行かない?私ね、ヒールが高くって、まっ赤で、かわいいーサンダルがほしいの。黒でもいいかなあ。とにかく、いろいろ見たいの」
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