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MICROMANCE
「んじゃあ、行きましょうか」
 あいつはタバコを灰皿でもみ消して、私はバッグを肩に立ちあがる。お店を出て、ゆるやかにのぼる坂道を、あいつと手をつないで歩く。鮮やかな街路樹の緑。見あげると、遥かに遠い空の青。続く、続く。
 あー、ずうーっとこのままがいいなー。ぽかぽかのなか、手をつないで、いつまでも歩いて歩いて。ゆっくりゆっくり、惜しむように。
「お」
 あいつが急に立ちどまった。
「サンダルの、ま、え、にー」
 あいつが指差すのは、二人のお気に入りの雑貨屋さん。名前はジョリ・ジョリ。
 お店のまえには赤、白、黄色のパイプチェアーが重ねられ、その手前にはテーブルクロスやエプロンの入ったバケツが並んでる。
「いいよー」
 黄色地に青の線が入ったテーブルクロスを広げてみると、お店の奥から声がした。
「あー!YASUKOちゃん!SATOSHIくーん!」
 走って出てきたのは、AKIさんだった。
「あー、AーKIーさあーん!」
 AKIさんはこのお店で働いてる友達。いつもは日曜日がお休みの日なんだけど、エプロンをしてるところを見ると今日は違うみたい。
「AKIさん、どうしたのー?今日はお休みじゃないのー?」
「うん、カゼひいちゃった子がいて、代わりなのー。元気ー?」
「げんきー」
 AKIさんは、見た目はめちゃめちゃクールなのに、しゃべるとめちゃめちゃかわいいの。はじめてAKIさんと話す人は、必ずそのギャップに驚いて「AKIさんはしゃべらないほうがいいねー」って言うくらい。でも、見た目も中身もカッコいい人って、実際はあんまりいない。
「AKIさん、商品入れ替えしたの?」
 あいつがお店をのぞいて言った。
「うん、おとといねー。ねえ、それよりYASUKOちゃん、プーやってるんだってー?」
「うん、先週までねー」
「え、なになにー、今度はどこで働いてるのー?」
「あのねー」
「GUU、今、小説書いてるんだよ」
「えー!小説ー?」
 通りすがりの人たちがみんな私たちを見てく。あいつのカッコよさとAKIさんのクールさ、それよりなにより私のかわいさが、人目を引いて離さない……にチガイない。
「ねえねえ、どんなの書いてるのー?恋愛?サスペンス?それともSF?まさかー、推理小説ー?」
「うんとねー」
「全然そんなんじゃなくて、なんか、日記みたいなやつだよ」
「え、じゃあじゃあ今日のことも書くー?私も登場するー?」
「うん」
「きゃー!じゃあもっとカッコよくしゃべらなきゃー!」
 お店の奥から女の子の声がした。
「AKIちゃーん!レジお願ーい!」
「あ、行かなきゃー。あとでねー!」


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