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MICROMANCE
「いやー、こっちの方がいいって。だってさ、これのほうが……ほら、コーヒーの色に合ってるしさ、それに……」
 あいつの説明がえんえんと続く。マジメに聞いてると、だんだんめんどくさくなってくる。奥に見える棚がだんだん気になってくる。
 棚のいちばんうえの段に、大きなサラダボウルが重ねられておかれてる。ガラス製、木製、プラスチック製。そのとなりは……あー、もう。あいつの顔がじゃまで見えない。
「……だからね、こっちのほうが……」
「いいよ、それで」
「え?」
「BAKAのやつにしよ?」
「いや、あの、ちょ、ちょっと待ってよ。そう言われるとGUUのやつがいいかなーなんて思ったりして」
「なあにー?どっちなのー?」
「い、いやあー……そっち」
 ほんとにバカだ。
 混雑するお店をぐるぐる回りつくしたころ、あいつの持つ買い物カゴはいっぱいになってた。
 うちに二個目のワインオプナー、コーヒーの木、木製のサラダボウル、新しいALの遠出用のカゴ、ローソク、麻の人形。結局、マグカップは二つ買うことになった。
 レジにできた行列の向こうで、AKIさんはいっしょうけんめい会計してる。私たちは行列に並びながら、カウンターに並べられたおもちゃで遊ぶ。
 変装グッズ、アメリカンクラッカー、動かすと交尾するサルのキーホルダー。あいつは何度も何度も交尾させて、めちゃめちゃうれしそうにはしゃいでる。
「うれしいのー?」
 あいつは笑顔でうなずく。
「よかったねー」
 大きくうなずく。
 私たちの番がきて、AKIさんはちょっとほっとした顔をした。ヒタイが汗で少し光ってる。もう一人の店員の女の子は棚のものを整理したり新しく並べたりしてる。タイヘンだー。
 レジを打ちながら、AKIさんは他のお客さんに聞こえないようにささやいた。
「安くしとくねー」
「ありがとー」
 私たちも小声で答える。お金を払って黄色い袋に入れてもらう。
「YASUKOちゃん、こんど電話するね」
「うん」
「AKIさん、がんばってね」
 AKIさんは小さくうなずいた。
「じゃあ、またねー」
 AKIさんの振る手が、次のお客さんの背中で見えなくなった。行列は続いてる。
「AKIさん、かわいそう」
「日曜だからねえ」
「ちがうよー。日曜はなんにもわるくな、い……」
 振り返ると、町は金色の光だった。ビルも道も街路樹も看板も車も人も、あいつも私の体も。坂の頂上にあるまぶしい光を手でさえぎると、ビーズのブレスレットが一瞬きらめいた。


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