『MICROMANCE』
4
雨が降ってる。屋根にパラパラ雨の音。闇夜に白く雨脚がシトシト静かに浮かんで消える。くもって流れる窓ガラスには淡い私が映ってる。どこにいるんだろう。あいつはまだ、帰らない。
明日はみんなでお花見なのに。
黄色いワープロに向かいながら、私はいったいだれにこの言葉を向けてるの?あなたにじゃない。あいつにじゃない。私にじゃない。ゴミ箱に。
おととい、あいつと大ゲンカした。
その夜、私とALはあいつの帰りを「おかえりー」って出迎えた。あいつはただいまも言わず靴を脱いだ。いつもより三時間遅い、十時だった。
「どうしたのー?」
あいつは黙ったまま。私と目もあわせずにソファーに座り込んだ。めったに見ないテレビをつけて、タバコを吸う。
私がもう一度「どうしたの?」って聞いた。あいつはテレビを見つめたまま「ちょっとほっといてよ」ってつぶやいた。
私はだんだん不安になってきて、あいつの背中に抱きついてみた。
「どうしたのー!」
あいつは本気で私のウデを振り払った。
「べたべたすんなよ!」
頭にきた。
「べたべたすんなよって……抱きつくのをやめたときから、人はほんとに孤独になるんだよ?そんなこともわからないの!」
「頼むからほっといてくれよ!」
「なんなの!ひとがせっかく心配してあげてるって言うのに!」
あいつは黙り込んでタバコをふかした。
「そうやって黙る!バイトでなにがあったのか知らないけど、そんなのうちに持ち込まないでよ!」
「バイトじゃねーよ」
「じゃあなんなのー!」
「別になんでもいいじゃん……関係ないだろ」
「関係ないならそんな顔して帰ってこないでよ!」
あいつはプイッとすると、それきり口を閉じた。こうなったらいつものパターン。
私がキーってなればなるほど、あいつは黙り込む。その態度がますます頭にきて、私はめちゃくちゃになる。怒って怒って怒って。だんだん涙が出てきて、鼻水もたれてくる。それでも怒るのをやめない。
そのうち、自分がどうして怒ってるのかわからなくなってくる。それでも意地で怒り続ける。疲れて眠るまで。
次の日、私はさわやかな気分で目を覚ます。私はめちゃめちゃ笑ってる。ケンカを次の日に持ち越すのは嫌い。お母さんに「あんたはニワトリみたいな子ね。三歩あるくともう笑ってる」って言われたくらい。
「ガチャ、ザーッ、ガチャ」
あいつが帰ってきた。時計は十二時を回ってる。ALはすぐに玄関に走ってった。私も暖かく出迎えてあげる。
「ちょっと!遅くなるなら電話ぐらいしてよ!」
やっぱりあいつは目をそらしたまま黙ってる。雨に濡れたクツを脱いで私を通り過ぎると、ソファーに座ってテレビをつけた。
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