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MICROMANCE
 あいつはタバコの灰を落として、ヒザで眠るALを見つめて、なでた。ALは目をつぶったまま耳だけぴくぴく動かした。
「それで、黙ってたの?」
 テレビから「ワハハ」と笑い声がする。
「考えてただけだよ」
「じゃあなんで私をムシするの?」
 あいつは顔をあげて、まともに私を見つめた。瞳で光るクリップライト。
「……いまはー、してないけどー、さっきまでー……」
 あいつは両目をさらに大きく見開いた。白目がいっぱい。まばたきしないで私を見つめる。じっと、じっと……
「わかったー、もう言わないからー」
 あいつは見開いた目をもとに戻した。消そうとするタバコを追う目がやさしくゆるんでる。くもった窓にあいつの背中が映ってる。雨音がやんでる。やっと、あがったみたい。
「じゃあ、もう、仲直りー?」
「んー」
 あいつはALをソファーに移して立ちあがった。
「あーよかったー。明日のお花見、どうしようかと思ってたんだからー」
 あいつはテレビを消して、しゃがんで、レコードを選んでる。
「あ、そうか、明日かー」
「なあにー、忘れてたのー?」
 レコードをプレーヤーにのせて針を落とす。
「いや……はい」
 アレサが静かに歌いだす。
 そう。明日の日曜日はガーデンプレースの近くの公園でお花見。私とあいつとKIDOくんとAKIさんとMANABUさんとMIKAちゃんとMONKEY、ぜんぶで七人で。
 私はタバコに火をつけた。くもった窓を手で拭いた。もくもく黒い雲の切れ間から、まっ白な月がのぞいてる。満開の桜が暗闇に白く浮かびあがってる。きっと、明日は晴れだ。
「ねえ」
「あん?」
 あいつはボリュームをあげた。部屋じゅう音で満たされる。
「明日はお弁当作らなくちゃいけないから、早起きするんだよー」
「何時?」
 ALがうるさそうに目を開けて、顔をあげて、また眠った。
「待ちあわせが一時だから……九時くらい?」
 あいつはALの顔色を見ながらボリュームをあわせて、リズムをとりながらソファーに座る。
「場所取りはどうすんの?」
「あ、そうかー。じゃあ……六時?」
「六時?!」
 そんなに驚かなくてもいいのに。あいつはビデオデッキの時計を見た。
「二時?!」
 あいつは一気に立ちあがった。
「GUU、寝よう!」
 あいつは鼻息を荒くしてそう言うと、ずんずん歩いてレコードをとめた。
 カチャ。
 とつぜん消えた曲。とつぜんあらわれた静寂、そして私。なんとなく、切ない。
「……寝れるの?」
 私の声が響いた。


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