『MICROMANCE』
あいつは上着を脱ぎながら「寝、る、のー!」とさけんでとなりの部屋に消えてった。ソファーに残されたまるいAL。ブ厚い本。黄色い、私の、ワープロ。
私はALの寝顔にしゃがみ込み、おやすみのキスをした。かわいいなー。ちっちゃくイビキをかいてる。私は立ちあがって電気を消す。
パチ。
窓から月が飛び込んだ。姿をあらわした月光、澄んだ闇。遠い、遠い、切ないもの。
青白いソファー。青白いAL。青白いローテーブル。青白い床。青白いカベ。青白い部屋。青白い、私。
青白い足が交互に歩く。タバコの赤が一瞬光る。消える。煙る。汚れる。歩く。過ぎる。私はベッドのまえに立つ。あいつは目をつぶってる。
「ねえ、もっと向こう行ってー。私の場所ー」
「んー」
あいつはごろんと回ってどけた。私はタバコの灰が落ちないようにゆっくりとベッドにもぐった。あいつが目を開けた。やっぱり眠れないみたい。
「なんだか一緒に寝るの、めちゃめちゃ久しぶりのような気がする」
「そうかー?」
「そうだよー」
私は枕もとの灰皿でタバコを消した。
この二日間、あいつと私は別々に寝てた。あいつがソファーで私はベッド。毎日は嫌だけど、たまにはこういうのもいいかもって思った。
だって、ベッドに入って両手と両足を思いきりのばした瞬間「一人で寝るってこーんなに気持いいものだったのかあー」って感動したの。
「そう言えばGUU、さっきの電話、誰だったの?」
あいつはタバコをとり出してくわえた。
「お母さん」
ライターがあいつの顔を照らした。
「なんて、言ってた?」
光が消えて、タバコの赤が残る。強く光って、弱まる。
「あのね、実家の庭の桜が満開で、もーめちゃめちゃキレイなんだって。お母さん、あまりのキレイさにお昼寝しちゃったみたいで、私が、いいなーって」
「なんだそれ」
タバコの赤がまた光る。
「あ、それでね、最後にお母さん、はやくBAKAと仲直りしなさい、って言ってたよ。よかったねー。これでお母さんたちとも仲直りじゃない?」
「んー……仲直りって言うか……俺とGUUの両親は憎み合ってケンカしてるわけじゃないからねえ」
あいつは灰皿に灰を落とした。
「じゃあ、どうしてすぐに仲直りしないのー?」
「どうしてって……うーん……なんて言うか、一度出しちゃったものはすぐに引っ込められない、みたいな変な意地を張っちゃっててさ……それに、ケンカしてても、お互い大して困ることもないし……」
あいつは煙をはき出した。
「どうでもいい、ってことー?」
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