『MICROMANCE』
5
「おいGUU……GUU!起きろー!」
薄目を開けると、フトンから上半身を起こしたあいつが私の肩を揺すってる。
「やべぇよGUU!」
そんなのは、キミの様子を見ればなんとなくわかるよ。首が自然に時計を見そうになったから、がんばってやめさせた。見たくない。
「起きろよ!もう十……」
耳をふさいだ。でもダメだった。ベッドから私の体に伝わってきた。明るさが、きつく閉じたまぶたから伝わってきた。私はフトンにもぐって小さくなる。あー、フカフカー。
「GUU!」
十二時二十分。
あいつの揺すりかたが激しくなる。私のフカフカを奪おうとする。
「強盗!」
ミノ虫である私は右手だけ出してあいつの体をつき飛ばす。力いっぱい。それを、あいつのかたいウデがじゃまをする。
「もう知らないからな!」
私はつき飛ばそうとした手で、こんどはあいつのウデをひっぱる。
「なんだよ!」
フトンから顔を出してみたら、あいつの顔が本気で怒ってた。
「GUUにはみんなが駅で俺たちを待ってる姿が目に浮かばないのか?腕時計を見ながら、重い荷物を肩に掛けて、不安そうにキョロキョロ通行人を調べてる姿が!」
じっと私をにらんでる。めちゃめちゃ怖い。私はおそるおそるあいつのウデをはなした。
「……ごめんなさい」
「……目覚し、なんで鳴らなかったんだ?」
「知らないよ。私がちゃんとセットしたの、BAKAだって知ってるでしょ?」
あいつは私の足もとにおいてある目覚し時計を手にとった。
「なんで一時にセットされてんだ?」
「そんなはずない。ちょっと見せてよ……あ」
オレンジ色の針が、のうのうと一時をさしてる。
「昨日俺があんなに聞いたよな、ちゃんと六時にセットしたのかって。それなのにGUUは確認もしないで、大丈夫大丈夫って」
「……」
「なんでちゃんと確認しなかったんだ?なあ?なんで?」
あいつのツバが飛んだ。
「ちょっと!そんなに責めないでよ!私にどうしろって言うの?うちの引き出しにタイムマシーンなんてついてないんだよ?それとも私が後悔してる顔を見て満足したいだけなの?ねえ!」
あいつはアゴをあげて両目をカッと見開いた。
「ああ、そうだよ。後悔した顔、しろよ。タイムマシーンがないんなら、お前が作れよ。なんならドラエモンでもいいんだぞ」
「死んじまえー!」
私はベッドから飛び出して、服をひっぱり出して、着替えて、スニーカーに足をつっ込んで、玄関を飛び出して、自転車にまたがった。
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