『MICROMANCE』
BAKAなんて!
橋なんて怖く、ない。山手通りを走り抜けて駒沢通りへ。立ちこぎで坂をのぼりきる。人込みのなかをサッソウと……
「いったーい!」
植え込みに引っかかった私のオレンジ色の自転車が、クルクルカチカチ回ってる。私は歩道に倒れてる。
あー、いい天気だなー。
青空には小さくてまっ白な雲が、いち、に、さん、よっつ。ギラギラの太陽目がけて、セブンクォーターのビルから一羽のハトが飛び立った。
上半身を起こしてみた。遠くで信号が赤。女の子の連れたラブラドールが、私の匂いをかいで、過ぎてった。植え込みの紫色のツツジの花が、私の自転車を囲むようにいっぱい咲いてる。
あーあ、ヒジ、すりむいちゃってる。
立ちあがって砂を払うと、目のまえのお店の人がのぞいてた。
「大丈夫ですかあ?」
「は、はい」
BAKAのせいだ。
自転車を起こして走りだす。モスで曲がって、茶屋坂のほうへ。ケヤキのアーチをくぐり抜け、ブロック塀にそって走る。右手に太陽。まうえに青空。
バス停を過ぎてポストが見えたら左に曲がって細い路地。泥棒見たらヒャクトウバン。タバコの自販機を越える。見えたー。
公園からニョキニョキ桜がのびてる。すみからすみまで満開だー。公園を回って電話ボックスを過ぎる。
いたー。恵比寿駅からみんなが手を振ってる。声が聞こえる。
「寝坊ー!」
ごめんねー。
紺のウインドブレーカーはKIDOくん。黒のカーディガンはAKIさん。赤いサングラスはMANABUさん。オーバーオールはMIKAちゃん。ボウシはMONKEY。みんな、そろってるみたい。
交差点で横断歩道をわたる。坂をのぼりきってみんなのところに着くと、MIKAちゃんが口だけ笑って言った。
「ちょっとあんた、ひとをあーんなへき地から呼んどいて、これはなーんのマネだい?」
「ほんっとごめーん」
「YASUKOちゃん、SATOSHIくんはー?」
AKIさんの質問に、私は眉をしかめて口をとがらせた。それを見たMIKAちゃんが言った。
「あーんたたち、まーたケンカしたのー?」
「あいつ、ひどいんだよー」
MONKEYが言った。
「YASUKOちゃん、どうしたの、その格好?」
MANABUさんがサングラスをあげてのぞいた。
「肘から血ー出てるよー?」
「くるとき、転んだの」
AKIさんが心配そうな顔をした。
「どこでー?」
「うーんと……セブンクォーターのあたり」
MIKAちゃんが言った。
「ほんと、ドジねえー」
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