『MICROMANCE』
KIDOくんは、ちらっとMIKAちゃんの顔を見て、私の顔を見て、目を伏せて首をかしげた。MIKAちゃんはその様子を見て、私を見た。
「これは早く飲ませないとね」
公園に続く階段をのぼる。向こうからざわめきが聞こえてくる。あいつがうえで立ちどまった。
「うぅーわ」
あいつがつぶやいた。背のびしてのぞいたら、公園は家族連れの人たちでごった返してた。
「どうすっかなー」
あいつが頭をかいた。
人込みからひょこんとつき出した青い鉄棒。その奥に並んでる桜の幹のあいだから山手線の電車が見えた。私は背のびをやめてタバコに火をつけた。
青空に太陽。階段に木陰。なまぬるい風がタバコの煙を巻き込んで空いっぱいに吹き抜ける。
「空くまで待ちましょう」
KIDOくんは肩からクーラーボックスをおろした。
「そうだねー」
階段をうめつくす私たち一行。KIDOくんがクーラーボックスからお酒をとりわける。私はあんずのお酒。
「ま、とりあえず場所が空くまでテキトウに。んじゃあ、かんぱーい」
みんなは缶をあわせた。一口飲んでみた。気のせいか桜の味がする。AKIさんが階段に座った。
「YASUKOちゃん、小説のほうはどう?」
MIKAちゃんが振り返った。
「小説ー?」
「そう。私、小説家になったんだよー」
AKIさんがうれしそうに言った。
「MIKAちゃん、その小説に私も登場するんだよー」
MIKAちゃんが言った。
「私はー?」
「登場するよー!」
「ほーんとー?」
MIKAちゃんは振り返ってあいつを見あげた。
「ねえSATOちゃーん!私、YAっちゃんの小説に登場するんだってー!」
あいつは顔だけ振り向いて答えた。
「あー、俺も登場するよー」
MIKAちゃんが私に振り返った。
「そうなのー?」
「うん」
「私と、どっちがいっぱい出るー?」
「BAKA。あいつ、最初から最後まで出るからー」
AKIさんが聞いた。
「じゃーあー、SATOSHIくんがー、主人公なのー?」
「主人公ー?うーん、だれだろう……私、かなあー」
MIKAちゃんが言った。
「あんたまーさか、自伝なんか書いてんじゃないでしょうねえー?」
「ジデン、って?」
MIKAちゃんも階段に座った。
「自伝っていうのはー、自分の、こーんないいとこや、あーんないいところを、えーんえんと書きつらねるやーつよ」
「ううん、いいとこじゃなくてー、事実……フフフ、ナイテキジジツを書いてるんだよー」
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