『MICROMANCE』
MIKAちゃんが言った。
「ナイテキジジツだかグレイシージュウジュツだか知らないけど、いったい私はどれくらい登場するのさ?」
「うーん、このくらいかなあ」
私は親指と人差し指をちょっとだけ開いて見せた。MIKAちゃんの顔色が変わった。めちゃめちゃ不満そう。AKIさんが言った。
「YASUKOちゃん、完成したら読ませてねー」
MIKAちゃんが「……私もー」って言った。
「フフフフ、いーいーよー」
「KIDOくんも、こんど写真見せてねー」
AKIさんの声にKIDOくんは顔を思いきり笑わせて答えた。
「あそこ、帰るみたいだね」
男たちが立ちあがって荷物を持った。
「このあいだね」
「うん」
私たちものろのろと続く。
「うちの近くのゴミ捨て場でゴミ捨てしてたときに、向こうからボロボロなかっこうした浮浪者の人が私の目をじいーっと見つめながら近づいてきたの。私は怖くなって身構えたら、その浮浪者の人が『あのー、ちょっとお聞きしたいのですが、渋谷駅に行くにはどちらの方角に向かったらよろしいのでしょうかー?』って、めっちゃめちゃていねいな言葉で道をたずねてきたの。中目黒の駅がすぐ近くに見えるのに、なんで渋谷駅なんだろうって思ったんだけど、その人はたずねながらもじりじり近づいてくるから、もう私、怖くてめちゃめちゃになって、あとずさりしながらとっさに『あ、ああ、あっちです!』って目黒の方角を指差しちゃったの。中目黒でも恵比寿でも、まして渋谷でもなくて。それで、その人は『ありがとうございました』ってふかぶかとおじぎして私が指差したほうに歩いて行っちゃって、私は『ああああー、神様、ごめんなさい、ごめんなさい』って」
「目黒駅に着いたときのその人の様子が目に浮かぶよ」
桜の木陰に三枚のレジャーシートがはためきながら広がった。そのうえに、それぞれが持ち寄ったお弁当を広げていく。サンドイッチ、おにぎり、ソーセージ、卵焼き、いろいろ。
「ごめんなさいねえ、うちだけこんなんでー」
そう言いながら、あいつは買い物袋からポテトチップス、サラミ、さきいか、缶詰め、コンビニの焼きそばをとり出した。それじゃあほんとにお酒のつまみじゃない。
KIDOくんは肩からクーラーボックスをおろした。
「そう言えばKIDOくん、お酒、いくらだったー?」
「あ、いや、いいんですよ。親父の差し入れです」
「ほんとー?ねえー!お酒はKIDOくんのお父さんのオゴリだってー!」
みんなでKIDOくんに「ごちそうさまー」って感謝した。KIDOくんは「ははは、俺の金じゃないですよ」って笑った。
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