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MICROMANCE
「だって、自分から写真を取ったら、何も残らないんです……あ、いや、そんなに大した写真は撮れないですけど……」
「KIDOくん、そこは謙遜するところじゃないよ」
「……はい……」
 MIKAちゃんの「あー」って声が聞こえた。
「それで?」
 あいつが続けた。
「それで……それで、思ったんです。俺にとって写真とは、自分が唯一乱暴になれる場所なんじゃないかって」
「乱暴?」
「はい。あ、でもそれは一般的な意味のそれじゃないし、粗雑さのことでもないんです。乱暴に泣き、乱暴に怒り、乱暴に笑い、乱暴にロマンティストになり、乱暴にリアリストになり、乱暴に理想を語り、乱暴に批判し、乱暴に優しくなり、乱暴に冷酷になり、乱暴に確信する。それはある意味、暴力で……暴力。社会としての自分に妥協しない、徹底した態度……」
 そう言いかけて、KIDOくんはタバコを吸った。
「写真以外の場所じゃ、ダメなの?」
 私が聞くと、KIDOくんは煙をはいた。
「……だめ、です。今みたいに酒でも飲んでれば別ですけど、シラフの時は体がジンジンするほど周りの目が気になるんです。……一人になるのが怖くて、自分に自信が持てなくて、きょろきょろ目配りして、傷つけないように嘘をついて、見捨てられないように嘘で着飾って。そうしてるうちに、だんだん自分自身の汚さに、弱さに嫌気がさしてくるんです、吐き気を催すくらいに」
 あいつがビールを飲んで、桜を見あげた。
「KIDOくんは汚くもないし弱くもないよ。そう感じてるKIDOくんがKIDOくんなんだから」
 タバコを消そうとしたら、レジャーシートに一匹のアリが迷ってた。
「分かってます……でも、それが分かってても、人との接し方が変えられるわけじゃないじゃないですか……だからこの間、思い切って『自分は弱い』って言ってみたんです。そうすれば少しは楽に人と付き合えるのかと思って。でも、その人に『お前は弱い』って冗談半分で言われた時に、ムキになって『そんなことはない』と反発してしまって……ああ、俺は今度は弱い振りをしてしまったんだ、って……そんな自分にまた嫌気がさしてきて……」
 迷子のアリは触角をいっしょうけんめい動かながら、ちょっとずつちょっとずつ進んでる。がんばれー。
「……だんだん自分に閉じこもって行くんです、傍観者のように。人は一人では強い人でも弱い人でもないし、汚い人でも誠実な人でもない、その場所に。孤独が怖くて、孤独を求める、どんどん矛盾に陥って行く」
 迷子のアリが……あーあ、ポテトチップスのすきまに入ってった。しーらない。
「うーん……あれだね、KIDOくんはいっつも酒飲んでればいいんだよ」
「……はは……」
「ねー!YAっちゃーん!」


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