『MICROMANCE』
向こうからMIKAちゃんがさけんだ。
「AKIさんたち、来週、バリに行くんだってー!」
「えー!ほんとー?」
AKIさんがさけんだ。
「ほーんーとー!」
「いいーなあー。ねえーBAKAー、AKIさんたち、バリに行くんだってー」
あいつはビールを飲み干した。
「聞こえてるよー」
「いーいーねー」
「ああ、いいねえー」
「……」
「GUUがノーベル賞の賞金で連れてってくれるんだろ?」
MIKAちゃんがさけんだ。
「バリの夕日は、砂浜までまっ赤に染めるんだってー!ちょっとMONKEYー、いいねー」
MONKEYはMIKAちゃんに「そうねえ」って言った。
夕日で砂までまっ赤、かー。ここの桜も夕日でまっ赤に染まるかなあ。そう言えば太陽がだいぶ傾いてるみたい。何時だろう。もう、三時半かー。
クーラーボックスの氷も小さくなって浮かんでる。お弁当もあいつが買ってきたつまみもほとんどなくなってる。ラジカセから流れる曲も、さっき聞いた覚えがある。
「あの」
KIDOくんがつぶやいた。
「なあに?」
「ミクロマンス、でしたよね?」
「私のデビュー作?そうだよー」
KIDOくんは目を落とした。
「それって、ある意味、すごく当たってるなあーって思うんですよ」
「どういうことー?」
「あの……例えば小説だったら、マクロ的視点から書くと、読者にぶつかってしまうって言うか……その……マクロって言うのは、ある意味『神』の視点で、その位置は唯一受け手に許された場所で、だから作者は、ミクロを敷き詰めていくことで、見えないマクロを描かなければならない……」
私はタバコに火をつけた。
「ロマンスはー?」
「ロマンスは……それはロマンスに限らないんですけど、視点には必ずなんらかの感情を交えて書かなければいけないと思うんですよ。感情って言ってもはっきり種類のわかる感情だけじゃなくて……なんて言うか、書き手としての自分という意識のない、つまり……ありふれた言い方で無意識、の中で書かなければいけない。じゃないと、ただの情報になってしまうと思うんです。生きた情報じゃなく、死んだ情報に。例えば悲しいときはそれなりに悲しくものが見えてしまう、みたいに。それは同時に人間を描くことでもあって……」
「ねえー!YASUKOちゃんたちはおみあげ、なにがいいー?!」
向こうからAKIさんがさけんだ。
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