LOGOS for web

完結した夏
 1(現)

 疲れていた。自分に何もなかった。疲れていた。夜だった。疲れていた。空が見たかった。空が動いていれば、それでよかった。
 だから窓を開けた。
 動いていた。空だけでなく、全てが動いていた。どうでもよかった。空の動き方が一番好きだった。苦痛だった。車の音が苦痛だった。隣家の明かりが苦痛だった。空だけあればよかった。警官が俺を見すえながら右から左へ過ぎて行った。警官は嫌いだ、緊張するから。女が好きだ、柔らかく、滑らかだから。どうでもいい、空があれば。蚊に刺された。餌にされた。どうでもよかった。嘘だ。殺していた。手のひらに貼りついたぺしゃんこの蚊の腹部から赤が散っていた。俺の血液かもしれない。
 そして気がついた。驚いたことに、俺を疲れさせているのは、俺だった。


2(遠)-1へ
BBSに感想を書く
著者へメール
寄付
back