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完結した夏
「あんたはどうして!」母が大きく手を振り上げた。「いつもいつも!」手を振り上げた。「いつもいつも!」手を振り上げた。「いつも!……いつも!」手を振り上げた。
 母は手を振り上げて、何度も何度も頬を張った。風を切る音がして、何度も何度も頬を張った。シャリシャリとブレスレットのぶつかり合う音がして、何度も何度も頬を張った。何度も、何度も、頬を張った。
「マ、マ……」そう言うと、母の手が止まった。
「あんたはあいつにそっくりなんだよ!」
 母はその手で俺の髪をつかみ上げると、引きずりながらどんどん歩いた。セミはまだ高らかに、隙間なく鳴いていた。空は青く、太陽は白く揺らめいていた。流れる風は蒸し暑く、その中に、俺はいつもの夏を見つけた。
 かすかに甘酸っぱい、汗ばんだ母の脇の匂い。


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