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完結した夏
 3(近)

「水面、お腹すいたよぉ」
 文香(あやか)は全裸で俺の脚に擦り寄った。サラサラとした長い黒髪が俺の脚にまとわりついた。俺は文香の頭をそのまま蹴り上げた。文香はドサリと床に転がった。
「うるっせえんだよ!」
 文香が床に伏せたままつぶやく。
「水面、お願い……お腹がすいて死にそうなの……お願い……」
 文香が両手で床をガリガリ引っ掻いた。俺は文香の髪をつかみ上げ、自分の顔を近づけた。文香の口に血がにじんでいた。
「何で俺がお前なんかに食わせてやんなきゃなんねえんだよ、ああ?」
 そのまま口づけた。柔らかな唇に口づけた。瑞々しい頬に口づけた。まぶたに、額に口づけた。鼻に、傷に口づけた。文香はその細い両腕を俺の首に絡ませた。
「ねえ、お願い……気持ちよくしてあげるから……ねえ……」
「……あ、げ、る?」
 頭を床に投げつけた。文香は深く倒れ伏した。カーテン越しの光を浴びて、その様は美しかった。
 俺は冷蔵庫のドアを開き、残っていた御飯と卵と豆腐とマリネをボウルにぶち込んだ。そこにマヨネーズとケチャップとタバスコをぶちまけて、ゴチャゴチャと掻き混ぜた。
「ほら、食えよ」
 床に伏した文香の顔の前にボウルを置いた。
「……あの……スプーンとか……」
「イヌはそのまま食うんだろ?」
「はい……」
 文香はボウルに顔を突っ込み、うまそうにガツガツ食べた。腕をたたみ、脚をたたみ、背を丸め、ガツガツ食べた。カーテン越しの淡い光を浴びたその姿は神々しく、清らかだった。俺は完全に興奮した。
 文香の柔らかな尻を両手で持ち上げ、挿入した。ボウルの中で文香がうめいた。入れて出し、出して入れ、深度を徐々に増して行った。俺はカーテンを開いた。青空だった。
「文香、いい加減に憶えたか?」
 青空を横切って、カラスが黒い翼を大きく広げた。その羽根の一枚一枚をはためかせながら空をつかんで減速し、羽ばたき、向かいの屋根に着地した。
「恐れを知らない奴は、何一つ知らない奴だと」
 強い日差しを浴びて陰影を際立たせた文香の背筋が、うめきとともにしなやかにのけ反った。俺はさらに激しく動いた。
 ジリジリと青い空。遠く聞こえるセミのノイズ。張り詰め、のけ反る背筋。文香のうめきが高くなる。尻を握る手に力が込もる。突き上げる快楽が怒濤のごとく、止められず、俺は完全に痙攣した。
 最高、だ。
 完全に放出し、滑らかに抜き去ると、文香のボウルが転がった。綺麗に舐められた舌の跡が残っていた。
 俺はジリジリとした日差しの中でうつ伏せる文香を腕に抱き上げた。恍惚の表情を浮かべる文香をベッドに下ろし、口もとに残った一粒の飯粒を舐め上げた。
「文香、セミの欲情が夏を狂わせる、そうだろう?」
 文香の隣に横たわり、見ると、あの窓でカラスが俺をじっと見ていた。


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