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完結した夏
 13(遠)

 スズムシが静かに鳴いている。障子を透過した月光が畳の編み目を淡く浮き上がらせている。青白い光が添い寝する母を向こうから照らしている。暗がりに天井の木目は長く、押し入れの襖は閉じられている。壁一面の洋服ダンスが巨大に並び、塗壁にじっと影を落としている。
「み……な……も……」
 母が俺の頭を撫でている。スリップに落ちた月光は滑らかに反射し、二人の腰にかけ渡されたタオルケットは柔らかに発光している。布団に流れる母の髪は艶やかにその光を帯びていて、暗がりに辛うじて分かる眼差しは、この上なく和らかだ。
「み……な……も……」
 母の優しいささやきと、頭への優しい愛撫とが、俺にこの上ない安心感をもたらす。むずがゆいような心地よさが幸福な眠気を誘う。俺はこの瞬間がたまらなく好きだった。
「かわいい……私の……水面……」
 コオロギの静かな音とともに、俺は昇天するように眠りに落ちた。

 ……どれくらい時間が過ぎただろう。俺の意識は少しずつ異変に気づき始めた。ただ、決して目は開かなかった。
 異変は俺の顔の全面で起こっていた。額に、頬に、こめかみに、鼻に、耳に、あるいは口に、柔らかく、生温いものが、くっ着いたり、離れたり、うごめいたりしていた。時々チュッと音を立て、ヌルヌルと熱い液体が伝って落ちた。
「かわいい……ああ……水面……かわいい……」
 その声に、俺の身体は果てしない恐怖に硬直した。閉じた目に、何が起こっているかが映し出された。俺の顔を舐め回す母の舌が映し出された。熱い息が肌に触れ、震える手が俺の顔を辿った。俺は硬直から起こる身体の痙攣を必死に抑えていた。
 母のどろりとした舌が、あごの下へと這って行く。母の手が小刻みに震えながら俺のパジャマのボタンを辿り、一つ一つ外して行く。俺のうなじに電気が走った。開かれたパジャマの合わせの間をぬって、舌がどろどろと這い下りて行く。首筋から胸に、乳首に、腹に、ヘソに……
「私のかわいい……私のもの……渡さない……誰にも渡さない……かわいい私の……」
 母の震える両手がパジャマのズボンをゆっくり下ろした。硬直した小さな陰茎がズボンのゴムから跳ね上がり、思わず尻が硬直した時、怒濤のように沸き起こる嗚咽を俺は必死に噛み殺していた。
 脈打つ陰茎を目の前にして、しばらく母は動かなかった。眺めているらしかった。そして熱く湿った息が近づき、俺の陰茎は、衝撃とともに、包まれた。
「あ!」
 ついに声が口から漏れた。母の口に含まれた陰茎は、その舌で強烈に転がされた。過敏な亀頭の快感は、痛みを伴って脳髄を貫いた。母の髪が下腹部をくすぐるたび、強烈な刺激に腰は脈打たざるをえなかった。
 サラサラと母の髪の擦れる音。スズムシの声。俺の声。コオロギの声。


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