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完結した夏
 14(近)

 文香をシャワーで洗った。それは三日後のことだった。
 嘔吐のカスと一緒に、どろどろの垢も削り落とした。瑞々しい肌が露出して行った。文香は満ち足りた表情を満面に浮かべていた。かわいいやつだ。鼻を千切れる程に噛んでやった。さらに喜んだ。

 ……文香を拾ったのは、この夏の始めだった。
 バーからの帰り道、暗がりの電柱に、文香は落ちていた。文香は膝を抱え、地べたに座り込んでいた。足を止め、覗き込むと、文香は見上げて求めるような目をした。
 外灯の丸い明かりの中心に座る文香は、薄汚れたスカートの裾をはだけさせ、少女のように下着を露出していた。見詰め合う程に、互いの黒目から流れ出て溶け合うものがあった。
 ……やめだ。つまらない。

 綺麗になった文香をタオルで包んで拭いた。膝を脱力させて狂喜した。腕に重かったので投げ捨てた。
 シャツを羽織って家を出た。歩いて五分のキャッシュディスペンサー。カードを飲み込ませ、十万ほど引き出した。赤い数字で残高の紙が出て来た。放っておいた。
 スーパーで買い出しをし、買い物袋を両手に提げ、くわえタバコで空を見上げた。真夏の太陽がギラギラしていた。額を汗が伝った。
 足でドアを開け、靴を脱ぐと、文香は投げ捨てられたままだった。バスタオルに包まり、恍惚の表情で床に転がっていた。俺は腹を踏みつけて「うぐっ」通過した。
 冷蔵庫のドアを開け、食料を突っ込んだ。四段ある棚がトレーやら何やらで埋まって行った。背中で文香が問いかけた。
「ねえ……して?」
 俺は首を横に振った。棚は完全にすし詰めになった。壮観だ。
「ねえ、してよぉ……前戯はいらないから……ねえ」
 俺は首を横に振った。「それよりもタバコだ」ドアを閉めた。


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