LOGOS for web

完結した夏
 首を回すと、サイドテーブルのCDが目に留まった。陽光を受けて鏡のように反射していた。俺はタバコに火を点けて、そのCDをプレーヤーに乗せた。プレイ。
 ン、ズーン、ズーンズーン……ン、ズーン、ズーンズーン……そう、これだ……俺は床に寝転んだ。
 そう、この音のうねりの時……陽子が俺を笑った……タバコの煙が真上に伸びて行く。
「ハァ、あ、ハァ、ハァ……」頭上で文香が自慰を始めたようだ。俺はいい気分になって来た。
 そう、この音の爆発の時……陽子が俺の目を覗いていた……少し潤んでいて……気のせいか、求めるような……俺は目を閉じた。
 まぶたの裏で記録映画の上演だ。
 そう、この風のような音とリコーダーのような音が絡み合う時……陽子は……文香の喘ぎが重なった……セミの声も……タバコの味……床の硬い感触……陽子の部屋に入り……文香の喘ぎが高まった……手のひらの俺の髪の感触……見せてもらえなかったベッドルーム……クーラーの風が流れた……そこで陽子は妻子持ちと……眉を歪め……文香の声がくぐもった……
「くそっ!」
 俺はCDを取り出し、立ち上がった。文香は股間に手を挟んだまま、ぐったりと横たわっていた。俺はドアを開け、道に飛び出した。
 246を横断し、山手通りを大股で歩く。頭上に真夏の鮮やかな青空。ビルの窓に反射した太陽は、それぞれが本物の太陽だった。走る車に反射した太陽は、それぞれが本物の太陽だった。
 何倍もの夏が凝縮した通り……陽子の部屋はすぐそこにある。
 十二階の角部屋の……マンションは青空を背景に高く、遠い……セミの声を突き抜けて高く、遠い……俺は真夏のベッドルームに向かってアブラゼミよりも高く叫んだ。
「陽子!今、お前にぶち込んでやる!」


15(遠)-1へ
BBSに感想を書く
著者へメール
寄付
back