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完結した夏
 横に細く棚引く雲があって、空は金色だった。
「ああ」俺は灰皿に灰を落とした。「その方がいい」
 陽子がテーブルのコーヒーを口にした。「ねえ」俺は煙を吸い込んだ。「ん?」陽子が俺に目を向けた。「今日、THREE、くる?」
 俺は煙を吐き出した。「外人みたいな日本語だな」俺はタバコを揉み消した。「行く」
 陽子が笑顔で立ち上がった。「じゃあ、準備しよーっと」陽子が部屋に消えた。
 テーブルに残された陽子のマグカップを手に取り、口にした。コーヒーはややぬるく、酸味が強かった。目前で、空はやはり金色だった。俺の胸や腕や組んだ脚もまた、金色だった。マーラーの管楽は止んでいた。
 みいちゃん!……部屋の奥から声がした。……私、別れることにしたの!
「……何で?」
 何でって……何でも!
「……この部屋は、どうすんだ?」
 出る!
「……出て、どうすんだ?」
 なんとか、なるよ!
「……ならなかったら?」
「なーるーのー」陽子が戻って来た。「ね?」陽子が首を傾けた。
 そういうことか。
 俺は陽子を膝に座らせ、後ろから抱いた。「じゃあ、ここを出るな」
 少し間があって、うなずいた陽子の顔を後ろに向けさせ、唇を重ねた。
 何とかなるさ……ならなくなったら、何かを止めればいい。


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