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陽葬
  太陽

 屋上に続くドアを開けると、強い風が汗を冷やした。
 ヨウを抱え屋上に出ると、急に疲労を感じて、重なるように仰向けに倒れた。身体中がだるくて腕と背中が痛い。ヨウの質量と重力の間で胃は悲鳴を上げていたが、それを黙殺し、目を細めて太陽を眺めた。
 真夜中のビルの上、太陽はまもなく一番高い場所に昇ろうとしていた。
 目を閉じると焼き付いた太陽の残像が、瞼の裏でちらちら揺れる。それは水中から見上げた水面の光にも似ていた。

   魚

 ヨウを残し、店に戻ると、金魚は先程と同じようにじっと眠っていた。
 一瞬強い衝動を感じ、金魚鉢を床に叩き落す。
 文字通り叩き起こされた金魚は、割れた硝子と水浸しの床の上でびちびちと跳ねた。
 苦しいのか。
 僕には判らない。
 今日一本目の煙草に火を点けて、ゆっくり吸い込むとくらくらした。
 あの衝動は何だったんだ。
 煙草を吸いながら考えたが、その内金魚が動かなくなったので、考える事を止めて煙草を消した。

  電話2

 ビルを出ると、そこは白昼の歓楽街で、消えたネオン達は大層間抜けだった。生ごみを荒らすカラスや、道端の吐瀉物。そう云ったものばかり目に付いた。
 ヨウの携帯の着信メロディが鳴り出した。ポケットから取り出し通話ボタンを押す。
「もしもしヨウ?いつ帰ってくんのよ」
 店に電話をかけてきた女だった。
「今帰るよ」
 僕はヨウに成った。
 見上げると、ビルに囲まれた狭い空を太陽が通り過ぎようとしているところだった。太陽に晒され、腐敗してゆく誰かを想った。


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