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プジョーでペリエで
 リコは僕の部屋に何度も足を運ぶうち、仕事をする目とは違う目を見せ始めた。惚れた男を見る女の目だ。僕は自分を控えめな判断をする人間だと思うが、その僕にもはっきりそうだと思わせるほど、リコの目は露骨だった。
 リコはいい女だ。背は高く、スタイルもいい。顔は整っているし、声もセクシーだ。仕事も上手い。だが、その性格は受け入れられない。あまりにわがままな性格だ。
 わがままな女が好きな男は、おそらく星の数ほどいるだろう。だが、僕はだめだ。僕は小説が書きたくて生きている。僕が書きたいときにいなくなれない女は、だめなんだ。嫌な顔もせずに席を外すような、気分よく書かせてくれる女じゃないと、だめなんだ。
 だから僕はリコの告白を断った。たとえ仕事が切れたとしても、リコに毎日振り回されるよりは、はるかにましだ。
 リコは言った。「でも、私がユウジの小説を認めることに変わりはないわ。だから、もし嫌じゃなかったら、これからも私に担当させて欲しいの、いいでしょ?お願い」もちろん僕はうなずいた。
 僕の初めての連載が終わった日、リコはワインを両手に僕の部屋にやって来た。「お疲れさま」二人でグラスを合わせ、興奮気味に話し込み、ハイペースでワインを空けた。その後は、よくあるパターンだ。
 だが、リコはそれを楯に交際を迫ったりはしなかった。それどころか、目が覚めると、当たり前のように服を着て、仕事のときの目で「じゃ、GUSTANKの原稿、明後日に取りに来るから」と言って帰って行った。

 本当にいい女だ、そう思った。
 だが、いい女は、頭もいいらしかった。

 それからリコは仕事の目でやって来ては「エロスは実際に体験しないと上手く書けないのよ」と言ってまたがり、またあるときは「芸術家はモラルの中にじゃない、欲望と感覚の中にいるべきよ」と言ってペニスを擦った。
 そして僕はそれに応えた。負けた、とは言わない。自ら応えた。リコは間違いなくいい女だ、欲情しないほうがどうかしている。

 やがて、頭のいい女リコは、僕の承諾を得ずして、実質的な、彼女になった。

 デートをしたいときは、巧みに「これから会って欲しい人がいるの。一流の作家になりたいんなら、一流の人たちに会わないとだめよ」などと誘い、わずかな時間の会合を終えた後、長い時間を思い通りに連れ回した。僕が外出するときは必ず仕事の目で付き添い、他の女が寄りつかないようにした。しかも、やっかいなのは、時々本当に仕事の場合があるところだ。
 今日だってそうだ。


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