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MadarA
 ∞8∞

 わたしは二度と眠らないことに決めてから、何日経っているのかがわからない。
 バキバキ仔猫の骨が噛み砕かれる夢を見なくなった変わりに、黒い煙が現れるようになった。それは、冷蔵庫の中だったり、鏡の中だったり、様々な所に潜んでいる。それでもわたしは、午前10:00には、シャワーを浴び、ミネラルウォーターを飲み、髪だけはきちんと乾かし、Stussyのキャップを深くかぶり、坂を越え、緑の中の図書館へ通い続けている。
 坂を登る時の、心臓の速さにも、もう、慣れた。


 ∞9∞

 この大きな建物だけがわたしが発狂しているのか、していないのかを判断できる場所なんじゃないかと思う。窓際の席に向かい、歩き始めた時、腕を掴まれ振り返ると、月のように膨らんだ顔をした髪の長い、あの男がいた。
 君、が、言った通り、く、黒と黄色のまだらの血、血が出るのか、た、確かめようとお、思うんだ、、、、
 変なところで言葉を区切るのはどうしてなんだろう。
 お、お願いだから、一緒にみ、見てくれないか、、、
 驚くほど小さな声で男は言った。もしかしたら、声とは全く別の方法で伝えているのかも知れない。わたしには、声を発する力はなくて、唇の端を少しだけ上げて、微笑みのようなものをつくりだした。図書館を出て、公園の中を通り抜け、鴨が泳いでいる池の近くの公衆便所に連れて行かれ、鼻をつくアンモニアの匂いの中、男の後ろの壁にあの黒い煙がゆらゆらしながら、ゆっくりと膨張してゆくのを眺めていた。


 ∞x∞

 青白い顔の男は、顔だけじゃなく、Tシャツまで汗でべっとりはりついている。わたしのシャツをまくし上げ、ど、どっちがいい?右、ひ、ひだりどっちがいい?わたしが答えずにいると、あ、そう、ひ、左がいいよね、、
 ジーンズのポケットから、カッターの刃だけを取りだし、わたしの左手首に押し当て、ホントに、黒と黄色のまだらの血、で、出るよね、、
 カッターの刃は引かれ、嫌な感じのする痛みと同時に、熱いものが滴り落ちてゆき、脈のどくどくいう音が、狭い男子便所の中でこだましている。
 ホ、ホントだ!まだらだ!黒と黄色のまだらの血が出たよ!!
 歓喜する男の後ろの黒い煙は、小さくなり続け、カラス達の鳴き声が絶叫に変わっていった時、血の色は、黒と黄色のまだらと答えたのは、左ききの彼がくれた本に書かれていた蛇の模様だった事と、左胸のアザは、わたしが自分で殴りつけてできたものだったんだと思い出した。


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